新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 度量比べ 
 その頃。アンティオコス大王の大軍はサルディスを進発し、西へ進んでいた。
「出来ることならば、エライアからペルガモン方面へ進んだ所を戦場に」
 ペルガモン王国領内に戦場を持っていきたかった。
 とはいえ、七万余の大軍勢。しかも諸国から狩り集めた兵である。また、戦車隊や象軍など重装備の隊も多いとあって、進軍は遅々としたものとなった。
 何よりも、互いに言葉も介さぬ多くの民族が密集しているのだ。大王の威光でまとめあげていたが、その意思疎通は困難を極めたことだろう。
 こうして、のろのろした歩みで、ようやくマグネシアに到達した。ここはサルディスから僅か60キロメートル進んだ地点に過ぎない。




 マグネシア(現トルコ領マニサ)は、シピュロス山麓のギリシア人都市である。ニオベが岩にされたとされるギリシア神話の舞台でもある。確かに、その山麓には奇岩が散らばっている。
 大王軍は大軍勢。城内に全て入り切らず、溢れた兵は城外に思い思いに布陣した。
「陛下、使者が戻って来ました」
「おう、すぐに通せ」
 大王は、スキピオの息子プブリウスの身柄を届けるべく使者を送っていた。身柄送還の名目であったが、決戦前の最後の交渉という意味もあった。




(決戦は避け難いであろうが…何と言うか。また、彼の様子も確認しておきたい)
 スキピオの体調不良という風聞も耳にしていた。
(あわよくば、和睦が成るやも知れぬ)
 大王は、和睦に未練を残していた。
 それほどにスキピオ率いるローマ軍を恐れを抱いていたのである。




 立ち戻った使者は例のヘラクレイデス。
「陛下、只今戻りました」
「挨拶など良い。どうであった、スキピオの容子は」
「は。病は癒えているらしゅうございましたが…。顔蒼白く、全快には程遠いと拝察いたしました」
「そうか。良くないのか」
 大王は喜色を浮かべ安堵の溜め息をついた。
 それは朗報に他ならない。最も恐るべき敵が陣頭で指揮を取れないのであるから。




「…して、彼は息子の身柄引き渡しについて何か申しておったか」
「はい。素直に大王に感謝申し上げる、と。この礼と申しては何だが、是非、正々堂々相対したいもの。ついては自分が出馬するまでお待ちありたい、と」
「なに。出陣できるまで待て、と申したか」
 さすがの大王も、この返事には驚いたようだ。
 病中であることを隠しもせずに面会し、自身の体調整うまで戦闘を見合わせろとは、なんという図々しい言い草であろう。それは、自身が采配をとりさえすれば、三倍近い兵力相手にも絶対勝てると踏んでいることに他ならなかった。
(なんとふてぶてしい…。いや、無類の自信家というべきか)


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