新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 マグネシアの戦い−睨み合い
 紀元前190年12月。
 ローマ軍、アンティオコス大王軍、早朝に始まった両軍の睨み合いは陽が高くなっても続いていた。



「あれから12年か…」
 馬上、感慨深げに呟いたのは、ローマ軍総司令官ルキウス・スキピオ。
 『あれ』とはザマの決戦のこと。あれから12年の時が経過していた。
 地中海の覇権を賭けたあの戦場、これに勝てば明日を掴めると思った。相手は無敵のハンニバル。だから、まさに国家の存亡、自らの生死を賭けた文字通りの決戦であった。
 それに比べると、この戦いにそこまでの切迫感はない。あの恐るべきハンニバルが味方する敵ではあるが、幸いかな、敵陣にその大敵はいない。




「世界の頂点を決する戦い」
 ルキウスはそう認識し、この戦いに臨んでいた。
 ローマ共和国、セレウコス朝シリア、いずれが世界の覇者かを決する戦いである。
 この戦いの勝者が、地中海からオリエントに至る世界を差配することになるのだ。




「敵の配置はどうだ」
 ルキウスは傍らにいるミルトに訊ねた。
 そのミルトは、四十を越えても、なお遥か遠くを見通す視力で敵陣を眺めた。
「は。敵陣の並びの通りにございます」
 即ち、左右両翼に帝国最精鋭の騎兵隊アゲーマ六千が配され、右翼をアンティオコス大王、左翼をセレウコス王子が指揮した。そして、中央に分厚い歩兵部隊ファランクス一万六千をリュディア総督ゼウクシスが指揮した。
 歩兵の隣には象が二十二頭、そして、その隣にはアラビアのラクダ騎兵。
 そして、注目の大戦車隊二百台は王族のアンティパトロスが指揮をとる。


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