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マグネシアの戦い−戦車隊(続き)
大王軍にラッパの音が鳴り響いた。
その音は、戦場にある全ての者に意外に響いた。日没後の会戦など前代未聞だからだ。
「やっとか!」
戦車隊の指揮官アンティパトロス、戦車上で勇躍した。
「前進せよ!エウメネス隊に突っ込め!」
抜刀し、切っ先を前方にびしと向けた。
「それっ!」「はあっ!」
御者がびしと馬の背に鞭打ち、二頭の馬に引かれて戦車は勢いよく駆け出した。車軸の鎌を振り回し大地を疾駆していく。
「わあああ!」「うおおお!」
戦場全体に大喚声が沸き起こった。
ここに、地中海世界とアジアの命運を賭け、決戦の火蓋が切って落とされた。
戦車隊は、エウメネス二世率いる重厚な厚みを見せる歩兵部隊に一散に向かって行く。
ここに二万近い兵力が集結している。
「それっ!歩兵どもを駆け散らせ!」
アンティパトロスは疾走する戦車の上で叫んだ。
歩兵相手の戦車隊は無敵。重装歩兵であっても物の数ではない。盾や槍で戦車を押しとどめるなど無謀の極み。
駆け散らしてしまえば、あとはこちらのもの。車体の上から、投槍や矢をびゅんびゅん放ち仕留めるだけだ。
(エウメネス隊を破り、転じてルキウスの本隊に攻め込むのだ)
大王より一撃だけと念押しされていたが、アンティパトロスは、エウメネス隊を撃破すれば、それに乗ずるのは当然と思っていた。
大喚声と共に押し寄せる戦車の大部隊。日没間際の残光に反射し、金具と車軸の鎌が閃光を放っていた。
「王君!戦車が来ますぞ!」
アカイア同盟の将ディオファネスは叫んだ。
「慌て召さるな」
エウメネス二世、泰然自若としていた。
とはいえ、王も、この光景を想像し悪夢にうなされる日々を過ごした。そのため全身全霊の知恵を絞り考え抜いた。そして、一つの結論に達していた。
「軽装歩兵、前へ!」
王の命令で歩兵の列の間から飛び出したのは、弓兵と投石兵の兵たち。
「戦車の左右より馬を目掛け撃て!」
その命令は、予め隊長級の将官には伝えてあった。だが、王は敢えて改めてここで号令した。そうすることで、将兵全てに指揮官の意思を浸透させることが出来るのだ。
「おう!」
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