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マグネシアの戦い−戦車隊(さらに続き)
軽装歩兵は数人一組になり、脱兎の如く戦車に向かった。
乗員の弓射の標的にならぬよう戦車の進路から距離を置き、弓をぐっと番え、また投石兵器をぶるぶるん回し始めた。
「撃て!」
矢と石が一斉にびゅんと放たれた。
それは低い軌道を描いた。そう。それは乗員を狙ったものではなかった。
「ひひーん」
戦車を引く馬が突然いななき、車体ががくんと傾いた。
「うわっ!」
戦車の御者はつんのめった。
矢と石が馬の脚に当たり、馬がその場に崩れたからだ。
二頭立てであるが、一頭が倒れては引くことはできない。当然、走行不能となる。
停止した戦車の乗員が予期するのは、取り囲まれることだ。戦車の機動性の喪失は、生命の危機に直結する。
「くそっ」
乗員は本能的に弓を構えたが、その時には軽装歩兵は逃げ去っていた。
「え…なんだ」
乗員たちは拍子抜けした。
が、エウメネス隊の軽装歩兵たちは決して逃げたのではなかった。彼らは次の獲物を狙って駆け出していたのだ。
「一頭だけを倒せばよし!次の戦車に向かえ!」
軽装歩兵の小隊長らは、それを合い言葉に繰り返し叫んでいた。
それはエウメネスが事前に噛んで含めるように命じていたこと。
「一頭さえ倒せば戦車は走行不能。乗員を討つには及ばぬ。そなたらの役目は、敵の戦車隊を役立たずなものにすることにある」
無論、これはドミティウスと二人で練りに練った作戦。
だから、一頭を仕留めると、彼らはすぐさま次の獲物を求め駆けて行く。
同じことがあちこちで起こった。
軽装歩兵が左右から遠巻きにして戦車を引く馬を狙い矢と石を撃ち込む。
馬が倒れ、車体が傾き、走行不能となる。
「うわっ!」
御者や乗員が車体から放り出された。
戦車に軽装歩兵をぶつけるという意外な着想。
戦車対軽装歩兵。この史上初めての対決は、軽装歩兵に軍配が上がりつつあった。
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