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渡りに船
マニアケスが雄大な風景にもの思いに耽っていると、
「頭領様!」
配下の少女が駆けよって来て使者の来訪を告げた。
「そうか…来たか」
マニアケスは驚かなかった。むしろ、当然あり得ることと予期していた風ですらある。
「謁見の間にでも通しておけ」
歴代セレウコス王朝の王族重臣が根城にしていたから、ここには宮殿が置かれている。
(ふうむ…何を言うてきたかな)
それは思い悩む容子ではなく、むしろ愉し気ですらあった。
元来、彼女は自身の生命を突き放しているところがある。それは決して捨て鉢ということではない。何事をなすにも生命を顧みることはないということだ。人は、本能的に、自身の生命に配慮するが、彼女にはそれがない。
その躊躇のなさが彼女の凄みの元。だから、この孤城に取り残された今も、浮き足立つ容子など微塵もない。
(ここにあるのは全て覚悟を決めた者ばかり)
故郷に家族のある兵士は既に落ち延びさせてやった。ここに残るのは、彼女と覚悟を共にする配下の少女たち、彼女に忠誠を誓う傭兵。惨めな末路を辿るくらいならば、華々しく戦って果てんとの気概ある者ばかり。
(いざなとれば、スキピオの本陣に突入し、大混乱に陥れて果ててくれよう)
そういう肝の坐った人間に、刃の脅しは利かない。むしろ逆効果であろう。
だが、そういう自分をよく知っているのが、そのスキピオであった。
(スキピオ…今度は何を言うて来るのか)
彼女は、何かわくわくする心地で、使者の待つ謁見の間のある建物へと向かった。
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