新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 二人の述懐(続き)
「あれは…マッシリアであったなあ」
 スキピオは敢えてラテン語で語りかけた。
 となると、理解出来るのはローマ軍の将官だけ。ここでは、スキピオ兄弟の他は、軍団長ドミティウスだけということになる。




「はい。閣下を抹殺するつもりでヘタイラ(娼婦)に扮し近づきました」
 マニアケスは、ほほと笑った。
 今から28年前の紀元前218年、スキピオは父スキピオ率いる遠征軍に従いマッシリア(現マルセイユ)に赴いたことがある。
「危なかった。そなたの美貌と踊りに夢中になっていたら、いきなり襲いかかって来たのであるからな。ラエリウスがいなかったら、仕留められていたことだろう」
 スキピオは首筋をぺんぺん叩いた。



 二人は、あたかも幼馴染みが再会したかのように、昔話に興じていく。
 居並ぶ諸将は唖然としていた。
 エウメネス王らギリシア人の将には会話の内容は分からない。だが、その語気で、二人の会話が親し気なものであることは察することが出来る。




「かえすがえすもアルキメデス先生を救えなかったのは悔やまれる」
 スキピオは、ずっと心の底にあったつかえを、ここで吐き出した。
 マニアケスは苦笑した。彼女こそシラクサ争奪戦の当事者の一人。
「先生は私がどうこう言う前にとうに覚悟を決めておられました」
「分かっている。あの時は分からなかったがな。今はよく分かる」
 アルキメデスは、ヒエロンの遺託に従い全智全霊を駆使してローマと戦い、国家の最後に己の最期を重ねた。それはいかなる名将をも凌ぐ潔い最期であった。



「良く生き良く死んだ。人間らしい生き様なのだと」
「まこと正々粛々、御立派な振る舞いでありました」
 二人は、しみじみと述懐した。


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