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二人の述懐(さらに続き)
「マニアケスよ」
スキピオはギリシア語に切り替えた。
「はい」
「もう…いいだろう。ここらで」
スキピオは諭すように言った。
「…はい」
「この世界を平和の世にしようではないか」
「は…」
マニアケスはうつむいた。
亡きアルキメデスに責められている如く響いた。
今回の戦いに、大王側の大義はなかったというしかない。アイトリア同盟という横暴不遜な勢力を頼みギリシア上陸を強行したこと自体、失策というほかない。
『徳なくば権力崩壊は必然。力だけで国を治めることはできない』
老数学者は、かつてそう断じた。
恐らく、このことは2000年を経た今日も正しいことといえよう。だが、徳のない政治家の何と多いことか。権益にしがみつく愚か者が人類社会を脅かし、力に頼る愚劣な独裁者が人々に恐怖を与えている現実。およそ信じ難い話だ。
アンティオコス大王は、まさに力のみを頼む結果となった。敗北は必定。
「大王に伝えよ。このサルディスに使者を差し向けるように。明日の世を定めるために」
スキピオは明快に言い渡した。
マニアケスは抗弁する言葉を持たなかった。
大王のため、ハンニバルのため、あれやこれやスキピオの非難に立ち向かうつもりでいたのに、昔話に花を咲かせ共感した今、抗う意欲の全てを奪われていた。
(恐ろしい人物だ…)
もはや歯の立つ相手ではない。そういうことだ。
「ははーっ」
彼女は、申し出を素直に畏むしかなかった。
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