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母なる都市(続き)
(世界史の趨勢はローマにある)
落ち着いた頭脳になった大王は、もはやそれを認めざるを得ない。
同時に、即位から今日までの出来事が走馬灯のように甦って来る。
信頼していたモロン兄弟の謀反。権臣ヘルイメアスの誅滅。
王位を確立すると、エジプト王国との戦い、叔父アカイオスとの死闘。次いで、念願の東方遠征に打って出てパルティア、バクトリアを平定。メガスの権威を克ち得た。
あと一つ。ギリシア本土制覇を達成すれば、大業は完成を見る筈であった。
だが、新興ローマに見るも無残に敗れた。
(今は帝国の存続を図ることだ)
単純な結論に到達した。だが、このように肚をくくること、マグネシアの敗戦後、それすらも難しい喧噪の中にいた。大いなる前進だ。
大王はざぶと湯船から上がった。
「よし…。王妃よ、戻るぞ」
「え、もうでございますか」
「そなたはしばらく滞在しても構わぬぞ」
大王は笑った。
「いえ。わたくしは陛下と一心同体。一緒に戻ります」
少しむっとした口調となった。
(面白い女だ)
こういうところがあった。誰よりも大王のことを慮る、そのことに己の自尊全てを傾けているようであった。
王妃も美しい姿態も露に、大王の後に続いた。
大王は、衣服をまとうと、そそくさとアパメイアの城に戻って行った。
帰城した大王は、直ちにハンニバルを呼び出した。
大王麾下の重臣たち全てがこのアパメイアに集まっていた。ここでの御前会議が、今後の帝国の一大方針を決することになるからだ。
「陛下、ハンニバル、参上いたしました」
「うむ」
大王は頷いた。
彼の姿を見て、一つの悔いをここで覚えた。
(この者に一度でも全軍の指揮を委ねればよかった…)
そのことだ。テルモピュライ、マグネシア、いずれかをハンニバルが采配を振るえばどうなったろう。少なくともマグネシア敗戦の如き無残な結末にはならなかったろう。
(だが、もうその機会は訪れぬ…)
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