新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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↑※エフェソスのアルテミス神像です。This file is licensed under the Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0 Generic license.

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 アルテミス神殿(続き)
 エフェソス市民は神殿の再建に着手した。巨費が投じられた。
 当時台頭しつつあったアレクサンドロス大王から寄進の申し出があった。
 市民は丁重に断った。
「我がポリスの力で再建するのだ」
 その気概である。




 市民の尊厳と誇りを結晶にした神殿の建設は延々続き、工期はなんと120年に及んだ。紀元前356年から起算し、同236年頃に完成したということになる。
 高さ十六メートルにも及ぶ列柱が並び、柱は極彩色に彩られ、神々や英雄、都市の偉人たちの姿などが精密に彫刻されている。
 この美しい神殿は、ゴート族の侵攻略奪により崩壊し、二度と再建されることはなかった。残念ながら現代の我々は目にすることが出来ない(礎石が残るのみ)。




「これは見事な…」
 見上げたルキウス・スキピオは思わず感嘆の声を上げた。
 兄弟は、神官に導かれ、神殿の中を進んだ。
「こちらが内陣にございます」
 神官の声が反響した。
 内陣に入ると、この御社の主神アルテミスの像が安置されてある。




「これは…」
 スキピオは絶句した。
 その女神の姿は、ギリシア本土でよく目にする神々の姿とはおよそ違った。
 アルテミス女神は元々はアジア土着の神で、ギリシア人が自分たちの神々の仲間に加えたらしい。おおらかなギリシア人らしい。
 ギリシアでは人間は神の似姿とされる。だから、神々は完成された人間の姿として表現された。究極の美男美女、雄々しい父親、温かな母親、として描かれ彫られた。




 だが、眼前のアルテミス女神像は、ギリシア繁栄の時代の遥か前から受け継がれて来たため、乳房を幾つも付けた特異な姿をしている。容貌もギリシア系のそれではない。
 その姿は、この神の由来を雄弁に物語る。ギリシアでは狩猟の神という位置づけであるが、元来は豊穣の神だったのであろう。


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