新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 アルテミス神殿(さらにさらに続き)
 その声に、立ち込めていた煙が、今度はみるみる引いていく。
「うっ!」
 ルキウスはぎょっとした。
 一人の女が跪いていたからだ。
 その女が顔を上げると、
「あ!」
 ルキウスは小さな叫びを上げた。
「お前は…!」
「はい。マニアケスにございます」
 そこには、十数年前と変わらぬ美貌を誇る姿があった。




「ふ。タラスではアフロディーテに扮し、このエフェソスではアルテミスに化けるか」
 スキピオが皮肉めいた口調で言葉をかけた。
「タラスのことを御存知でしたか」
 マニアケスは目を丸くした。
「後にミルトから聞いた。何とも手の込んだことをするものよ、と」
「あの折は神をも味方に付けねば貴国に後れを取りそうでしたので」
 マニアケスは苦笑し、そんな風に弁明した。




 いとも気安い二人の容子に、ルキウスは戸惑った。
「兄上は…マニアケスがここに来ることを御存知でしたので」
「うん」
「それは人が悪い。わたくしにも教えて頂ければ…」
 ルキウスはしかめ面になった。
「いや、この者ではない。この者の主の方なのだ」
 スキピオはけろりとして言った。
 ルキウスは一瞬意味を掴みかねたが、意味する所を理解すると、瞳をこれ以上なく大きくした。
「え…それは…ああっ!」
 ルキウスが声を上ずらせたのは、列柱の一つの陰から、その人物が現れたからだ。
「ハンニバル!」


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