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アルテミス神殿(さらにさらに続き)
その声に、立ち込めていた煙が、今度はみるみる引いていく。
「うっ!」
ルキウスはぎょっとした。
一人の女が跪いていたからだ。
その女が顔を上げると、
「あ!」
ルキウスは小さな叫びを上げた。
「お前は…!」
「はい。マニアケスにございます」
そこには、十数年前と変わらぬ美貌を誇る姿があった。
「ふ。タラスではアフロディーテに扮し、このエフェソスではアルテミスに化けるか」
スキピオが皮肉めいた口調で言葉をかけた。
「タラスのことを御存知でしたか」
マニアケスは目を丸くした。
「後にミルトから聞いた。何とも手の込んだことをするものよ、と」
「あの折は神をも味方に付けねば貴国に後れを取りそうでしたので」
マニアケスは苦笑し、そんな風に弁明した。
いとも気安い二人の容子に、ルキウスは戸惑った。
「兄上は…マニアケスがここに来ることを御存知でしたので」
「うん」
「それは人が悪い。わたくしにも教えて頂ければ…」
ルキウスはしかめ面になった。
「いや、この者ではない。この者の主の方なのだ」
スキピオはけろりとして言った。
ルキウスは一瞬意味を掴みかねたが、意味する所を理解すると、瞳をこれ以上なく大きくした。
「え…それは…ああっ!」
ルキウスが声を上ずらせたのは、列柱の一つの陰から、その人物が現れたからだ。
「ハンニバル!」
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