新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 ローマ講和会議−エウダモスの演説(続き)
「さすがだなあ…」
 一番前の席に座り、しきりに感心していたのはスキピオ・アフリカヌス。
 彼は、弟ルキウスより一足先に帰国していた。
 スキピオ兄弟は、帰途立ち寄る諸都市で、熱烈な歓待攻めに遭った。そのため、春が過ぎ夏到来というのに、イタリアを踏むことすら出来なかった。




 途中、スキピオが音を上げた。
「あとはコンスルのそなたに任せる」
「え、そんな」
 名誉この上ない筈なのに、連日連夜の接待攻めに、弟ルキウスもげんなりしていた。
 過ぎたるは及ばざるが如し。過剰なもてなしは人をうんざりさせてしまう。
「そなたと同じく凱旋将軍のレギルス殿もいるから、人々も不足はなかろうて」
 一行には前法務官レギルスも同行していた。法律上、凱旋式挙行の有資格者は、ルキウスとレギルスだ。二人の主賓がおれば格好がつこうということだ。




 とはいえ、諸国の関心は、この軍の事実上の総指揮官である兄スキピオにある。
「人々は、我ら二人ではなく、兄上の話を聞きたがっているのです」
 ルキウスがそのことを指摘したが、
「そなたこそが正式な総司令官。私は副官に過ぎぬ。栄誉を受けるは僭越なり」
 そんな理屈をこね、スキピオは一行を抜け出した。
 そして、この講和会議に間に合わせたという訳だ。
(諸国の人々がなんと弁明し要求するか…。接待なんかよりこちらの方が興味がある)




 スキピオはギリシア語に通じているから、エウメネスの演説も、エウダモスの演説も、直ちに論旨が理解出来る。
(どう思われます。アフリカヌス殿)
 隣にいるフラミニヌスがひそと訊いて来た。彼もギリシア語に堪能。
(いずれも見事な弁舌ではある)
(いずれを叶えるべきですか?)
 元老院はそのことを悩んでいた。
 ペルガモンは、ローマがハンニバルに苦戦していた頃からの同盟国。ロードスは、今回の大王との海上の戦いで決定的な役割を果たしてくれた。




(両国に不足は与えてはならぬ)
(両国共に?)
(そうすれば、両国共に、アジアにおいてヘレニズム諸国の野望の盾になってくれよう)
(ヘレニズム諸国の野望…)
 フラミニヌスは驚いた顔になった。
 スキピオは、アンティオコス大王の敗北で、地中海世界においてローマ優勢は決定的となったが、マケドニアやシリアの野望が完全に消え去った訳ではないと見ていた。
(特にマケドニアのフィリッポスが怪しい…)
 セルギウスに密かに調べさせた所、フィリッポス五世は、アイトリアに備えるためと称し軍備増強に邁進しているという。


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