新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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↑※カトーです。


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 勝者の問題(続き)
 この新たな貧困の問題は、ローマ政治の潮流にも大きく影響を与えた。
 台頭して来たのは、カトーら保守派の党派である。
「旧き良きローマを取り戻そうではないか」
 長らく無視されて来た彼ら党派の主張が、再び日の目を見ることとなった。
「農民こそローマ国家の中核。その衰退は国家の存亡に関わる」
 この言葉は、困窮の極みにあった農民市民の琴線に触れた。
「そうだ!」「俺たちこそローマを支えて来たんだ!」



 ローマ国家は、伝承によると、羊飼いが建国したとされる。即ち、牧畜農業に携わる人民が市民団の中核となった。彼ら自営農民が国政を動かし、非常時に武装し外敵と戦った。
 その自分たちが没落するとは、国家の中身が台無しになるのと同義ではないか、と。
「伝統を取り戻し、行き過ぎた奢侈を戒めよ!」
 カトーの雄弁に市民は喝采を送った。
 カトーの言葉が強い説得力を持ったのは、経済社会の矛盾があったからだ。つまり、雄弁が雄弁たるのは、弁舌の巧拙だけではなく、言辞に確かな背景があるからだ。



 とはいえ、経済問題というものは、伝統を回復すれば解決するという精神的な話ではない。
 だが、貧困に喘ぐ者たちが、ついつい目の敵にしてしまうのは、やはり繁栄を謳歌する富裕層、いわゆる上流階級にある者たち。目ざとい者は、没落した農民から土地を買い漁り、危機を糧に、むしろ肥え太る者も少なからずいたからだ。
 となると、清貧で知られるカトーの支持が高まるのは政治的必然であったのだ。
「我がコミティアは、ケンソルに、マルクス・フォルキウス・カトー君を選出しました」
 この年(紀元前185年)、カトーは、ついにケンソル(監察官)に当選した。



 ケンソルは、インペリウムこそ与えられないが、絶対的な権威と権能を有する。
 主な権能は二つ。戸口調査(ケンスス)という市民の財産調査である。これにより市民を分類し、兵役・納税の義務の程度を定める。
 もう一つは、風紀の監督であり、それを著しく乱す者を懲罰する権利である。元老院議員が風紀を乱したと認定すれば、単独の権限で除名することも出来る。
 この二つ目の権限は絶大で、だからこそ最高官職とされる。
 恐らく、カトーがこの権限を握ったことで震え上がった者もいたに違いない。




 そして、カトー自身もこの権限を遺憾なく発揮しようと意気込んでいた。
「我がローマの伝統を汚した連中を追い落とす」
 それは彼の最大の政敵たちのこと。すなわち、スキピオ・アフリカヌス、ティトゥス・フラミニヌスの二人だ。
「この二人がローマの伝統を蝕んだ張本人たち」
 スキピオは真っ先にギリシア文化に傾倒し、フラミニヌスはギリシア本土から大量に文物を持ち込んだ。今や、ローマの紳士の誰もがギリシア語学習に熱を上げていた。挙げ句の果てに、ローマの歴史がギリシア語で著述される有様。




「この二人を追い落とさねばならぬ」
 とはいえ、二人は大戦を勝利に導いた英雄。人気も絶大。いきなり彼らの弾劾に踏み切れば、市民の反感を買う恐れがあった。
「まずは周囲から攻めるのだ」
 マルクス・フォルキウス・カトー、峻厳な眼光がローマ政界に光り始めた。


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