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清廉なグラックス殿
カトーの攻撃は、いよいよ大本命へと絞られた。
「スキピオ・アフリカヌスこそローマ堕落の根源」
だが、相手はローマ最大の実力者。
(確たる証拠を集め、味方をもっと増やさねば、弾劾手続はもたぬであろう)
弁護士としての嗅覚と慎重、それをそのまま政治家としての生き様に重ねていた。
一時ほどではないにしろ、スキピオ人気は根強い。ヒスパニア、アフリカ、そしてアジアを股に掛け活躍した彼は、ローマっ子の誇りそのものであるからだ。
ここ監察官カトーの屋敷。
「なんと、わたくしにスキピオ殿を告発せよ、と仰せか」
驚いたのはティベリウス・センプローニウス・グラックス。あの対ハンニバル戦で奴隷軍団を指揮したグラックスの甥に当たる。この年(紀元前184年)の護民官である。
「左様。スキピオは公金を横領している疑いがある」
「な、なんと!」
グラックスは驚愕した。
「それは本当なのですか!」
「左様」
カトーは大きく頷き、数字が走り書きされた布切れを差し出した。
「これは…」
「ルキウス・スキピオがコンスルであった年(紀元前190年)の帳簿の写しである」
それは、ルキウスのアジア遠征における軍中の帳簿であった。
どこから手に入れたのか。恐らく、カトー支持者が、軍中にも広く根を張っていたということであろう。
「これを御覧あれ。500エウボイア・タラントンの使途が不明である」
対アンティオコス戦争の終結時、賠償金の内金として500タラントンを支払われていた。ローマ軍の冬営費用に充てること、そして、そこには当然スキピオ兄弟の便宜を図る意味も込められていたろう。具体的な使途を記載することが憚られるものも少なからずあったに違いない。
「おお…確かに…」
グラックス、目を大きく見開き、見入っていた。
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