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スキピオ弾劾(さらにさらに続き)
議場は静まり返り、壇上にあるグラックスも立ちすくんでいた。
「さ、されどアフリカヌス閣下、いかに祖国の英雄とて法を侵しては…」
護民官の職分を全うすべく、何とか言葉を押し出した。
スキピオは寂し気に微笑んだ。
「ならば貴君に訊こう。貴君の崇敬する故グラックス殿の些事を取り上げ、英名を汚す者が現れた時、君は平静でいられるのか」
グラックスは、奴隷軍団を統率してハンニバルと戦い続け、ルカニアの地に倒れた叔父グラックスを尊敬してやまなかった。
「そ…それは…」
グラックスはうなだれた。
スキピオは、ケンソルのカトーを睨み付けた。
「ケンソル殿。貴殿なのであろう」
本当の敵はあなたなのだということ。
そのカトーは、相手の眼光を跳ね返すかのように、傲然と胸を反らした。
「我はケンソルの務めを果たしているだけぞ」
「よろしい」
スキピオは不敵な笑みを浮かべた。
「コミティアでも何でも開催するがよかろう。私はどこにでも出て、いかようにも反駁する用意がある」
この時、スキピオとカトーはローマ政界の両雄。それが激突したのだ。
カトーは冷笑を浮かべた。
「殊勝な申し出である。ならば、護民官殿に申して、コミティアを開催するよう取り計らうとしよう。そこで、貴君の問題も論じ、黒白を決しようではないか」
ここのコミティアは、コミティア・ケントゥリア即ち兵員会。兵役義務を負う成人市民により構成される、ローマ国制上の最高機関であった。
「異存はない」
使途不明金の問題の決着はコミティアに持ち越しとなった。
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