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ハンニバルその後−野原に散る
ここニコメディアの王城。
「ハンニバルは遅いのう…」
じりじりしていたのは、王子プルシアス。
彼はハンニバルにずっと反感を抱いていた。父は既に高齢。息子である自分の王位継承は差し迫っていた。
王となり国家の運営を思うと、ローマとの関係は極めて重要と思わざるを得ない。ライヴァルの隣国ペルガモンは、ローマ元老院の信頼を克ち取り、タウロス以西の広大な領土を獲得し、群を抜く大国となっているのだ。
それなのに、ローマの大罪人ハンニバルが転がり込んで来た。父が彼を重用し、嬉々として話を訊く容子に、次代の王として甚だ不愉快となった。
(ハンニバルという危険な駒を弄んでいる時ではない)
時代の趨勢はローマの洋々たる前途を指し示していた。
それゆえ、常々父を諌めて来たし、フラミニヌスにも密かに知らせ、ローマに対し二心のないこと、誠意を示そうと苦慮して来た。
だから、父プルシアス一世とフラミニヌスの話がまとまり、父からハンニバル捕縛を命じられると、
「ようやくこの時が来た」
王子は安堵の面持ちとなった。
彼は、すぐさま屋敷を包囲してと思ったが、父は詳細な指示が付していた。
『ハンニバルは用心深い男。屋敷には脱出するための工夫を施しておろう。それゆえ、宴席を設けて王城に招き寄せ、一気に絡めとれ』
(さすが…アジア随一の策士と言われるだけはある)
そこで、父の指図通り使者をやって招いたが、いっかなそのハンニバルは現れない。
不審に思って容子を見に遣らせると、途中、見目麗しい女が一人立っていたそうな。
その女は、こう告げたとか。
「我が主ハンニバルは、王子様にお渡しする贈り物あることを失念し、屋敷にいったん戻りましてございます。その用意整い次第、速やかに宮殿に伺います」
だが、それからしばらくしてもハンニバルは現れない。
(これは…おかしいぞ)
プルシアス王子はすっくと立ち上がった。
「これっ、直ちにハンニバルの屋敷に向かえ!取り囲んで誰も逃がすな!」
「ははっ!」
数百の兵が城を飛び出し、ハンニバルの屋敷に駆け向かった。
四方を取り囲んでわっと押し入ったが、屋敷の内は既にもぬけの殻であった。
「しまった…ハンニバルは逃げた後だぞ」
屋敷中しらみつぶしに探したが、従者の一人もいない。普段から、今日という日に入念に備えていたものであろう。
「ええい、追え!追うのだ!」
兵は屋敷を飛び出した。
王都は騒然となった。
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