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スキピオその後−夢
ラエリウスがローマに帰ったその夜。
スキピオは夢を見た。
薄もやがかかっていたが、そこは見覚えのある懐かしい風景。
東西に山並みが連なり集落が点在する。
「ここは…ラケダイモン(スパルタ)か」
向こうからやって来るのは…。
「プブリウス」
その人は、少年の頃のように我を呼んだ。
「あなたは…」
スキピオは瞳を大きくした。それはあの雄々しい王クレオメネス。
いつの間にか眼前にスパルタを流れるエウロータスの川があった。
二人は、あの時のように川の土手に腰掛けた。
「どうだ。そなた、己の本分を果たしたか」
王は、にやりとして聞いてきた。
「いえ」
スキピオは苦笑した。
「少年の頃、抱いた大志はとてつもなく大きいものでした。もっともっと大きな事をし遂げるつもりでしたが…。振り返ると、我が事は、こんな小さな事であったか、と」
「ふふふ」
クレオメネスは笑った。
「それならば良かった」
「え…?」
「そなたが、己の成したことに思い上がっているのではないか案じておったのだ」
「いや…そのような」
スキピオはここでも苦い笑みを浮かべた。
そして、空を見上げて言った。
「人は、わたくしをアフリカヌスと呼び讃えてくれます。ヒスパニアとアフリカを平定した誉ある者として。ですが、そんな事績は千年の未来には跡形なく消えていることでしょう。プラトン先生やアルキメデス先生の真実には、到底歯が立ちますまい。彼らの事績は二千年の未来にも伝わっているでしょうから」
その言葉にクレオメネスは満足げに頷くと立ち上がった。
「よくぞ申した。それでこそ我が婿よ」
クレオメネスは幾度も頷きながら立ち去っていった。
「あ、いずこへ」
「はは。全ての人が赴く所だ。そなたもいずれ来ることになる。その時にまた会おう」
クレオメネスの声が谺した。
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