新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 ヘラクレイア要塞攻略
 間もなく、ペロピダス率いるテバイ軍六千が北上し、テルモピレーでイアソン率いるフェライ軍と合流した。
 ペロピダスはイアソンと会見した。
「これはペロピダス殿か、久しぶりだの」
 イアソンは、人懐っこい顔で声をかけてきた。
 フェライの一部将からフェライの指導者、さらに全テッサリアの支配者に上り詰めたイアソン。まさに一世の巨人だ。おおどかな態度で人を包み込んでくる。
 ペロピダスも丁重に挨拶を返した。
「ご無沙汰しております。レウクトラの折には、ありがたい援軍を派遣していただき感謝いたしております。エパミノンダスも、くれぐれも礼を申してあげてくれと」
「ははは。余は筋を通したまで。和平会議の名の下に他国を滅ぼすなど不道理に反対した以上、貴国に援軍を送るのは当然」
 と、そこまで言って言葉を切り、小声で
「ま、今のは建前。本当は親友のティモテオスから頼まれてやむを得ず送ったのじゃ。だから、そんなに感謝してもらう必要はない」といって微笑した。
 それを聞くとペロピダスは哄笑した。
(率直な御仁よ。この人柄も、今日のこの人を作り上げたものであろう)
 
 イアソンは、ヘラクレイア要塞を指さした。
「このヘラクレイア要塞は、わが軍が度々攻めても落ちなかった要害」
 前には川、後には山、さすがにスパルタ軍が要塞を築くだけあって天険だ。
「さすが軍国スパルタ。地の利を生かした要害ですな」
 ペロピダスは頷いた。
「ま、ここで立ち話もなんです。幕舎にて作戦を考えましょうかな」
 イアソンはにっこり笑って、ペロピダスたちを手招いた。
 張ったばかりの幕舎に入ると、早速に軍議を開いた。
「いかがかな、ペロピダス殿」
「なんでしょう」
「貴殿ならば、このヘラクレイアをどれくらいで落とせるかな。我らの軍は総勢一万五千。余ならば、そうだな…一月かな」
 イアソンは、いたずら好きの子どものように片目をつぶった。
(ふーむ。テバイの力を見ようということか…)
 左右にいたスキピオとゴルギアスは、ペロピダスがなんと答えるか注視した。
 ペロピダスはしばらく思案していたが、やがて口を開いた。
「一週間ですな」
「一週間!」
 さすがのイアソンも驚いた。
 いや、スキピオとゴルギアスも目を大きく見開いていた。
「本当ですか?我らが一万余の軍勢で数度攻撃しても陥ちなかったのですぞ」
 イアソンは疑わしそうな目を向けた。
 ペロピダスは微笑した。
「軍議の席で嘘は申しません。私に考えがあります。お任せください」
 そういうと、ペロピダスは、さっとマントを翻して退席して幕舎を出た。スキピオとゴルギアスも一礼して、続いて退席した。
 スキピオは、ペロピダスの許に駆け寄り、
「大丈夫ですか?あのような約束をして」と心配そうに言葉をかけた。
「ディオゲネスに調べてもらって分かったことがある」
「なんですか?」
「あの砦には大きな弱点がある」
 そういって、ペロピダスはスキピオの耳元で囁いた。
 スキピオは驚いた目をした。
「そこでだ…」
 ペロピダスは、また小声で何事か囁いた。
「分かりました」
 スキピオは勇躍して駆けて行った。
 
 一方幕舎では、フェライの将たちが呆気にとられていた。
 アレクサンドロスが訝しげな顔をイアソンに向けた。
「叔父上、一週間で陥落させるとは本当でしょうか?」
「分からぬ」
「ペロピダスは、我らへの手前、引っ込みがつかなくなって、つい大言壮語したのではないでしょうか」
「テバイのペロピダスともあろう者が、よもや嘘はいうまい。ま、お手並み拝見といこうではないか」
 イアソンは、別段、ペロピダスがしくじっても構わないと思っていた。
(ペロピダスが失敗した後、余が見事に攻め落として見せようて。ならば、テバイの者どもに、余の恐ろしさを見せ付けることができるというもの)
 イアソンは、今回の遠征を、フェライの力を誇示する絶好の機会と考えていたのだ。

 翌日、朝日が昇ると共にテバイ・フェライ連合軍は総攻撃を開始した。
 テバイ兵が喚声をあげてヘラクレイア要塞に殺到した。城門前に着くと、これを破ろうとして先端を鋭く削った丸太を持ち出した。城門を一気にぶち破ろうというのであろう。
 勿論、城兵もそれを黙って見てはいない。
「投槍を放て!石を落とせ!矢の雨を降らせよ!」
 石や矢が雨あられとテバイ兵の頭上に降り注いだ。
 テバイ兵は楯を頭上にかざして防いだが、丸太を担いで城門前に迫った兵は、手がふさがり防ぐ術がない。
「わあ!」「ぎゃあ!」
 悲鳴を上げて倒れた。
 それから、幾度となく迫ったが、城壁に取り付くこともできない。門前に、屍をいたずらに積み重ねるだけであった。
 ペロピダスは、じっと戦況を見ていたが、退却の合図を出した。
 砦の守将はスパルタ外国人部隊司令官ナウクレスであったが、彼は、城壁の上で、せせら笑っていた。
(ここは天下無双の要害。数万の軍勢で攻められてもびくともせぬわ)


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