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歩み
一方、バルカ党の人々は明らかにうろたえを見せていた。
彼らは、国内は、対ローマ強硬路線で固まったと思い、今日の会議も重視せず、同志たちにろくろく参集も呼びかけていなかったのだ。
「このままではまずい…」
ヒミルコは焦った。
彼は立ちあがると、バルカ党の同志たちの間を、あることを囁いて回っている。
(む…ヒミルコめ…何を動いている)
ジスコーネは眉間に皺を寄せた。
既に、採決は始まっていた。ハンノン党の議員が投票箱に木札をからんと投じていく。
(いかに企もうと、もうこちらのものだ)
そう。何度も目算し、自派の議員数の多いことを確認していた彼なのだ。
(まずは、ハンニバルから、大義の衣を剥ぎ取らねばならぬ)
いかに絶大な権力者とはいえ、その公の立場はイベリア総督。祖国カルタゴの同意なくば、ローマと戦うことに大義が立たない。
ハンニバルも一度立ち止まらざるを得ないであろう。
(そこで彼と正面向き合い、肝胆相照らし打開策を協議すればよい。なんの、いくらでも策はある)
間もなく、バルカ党の議員たちの順となった。
一人が、投票札を手にすっくと立ち上がった。
(おや)
ハンノン党の議員たちは首をかしげた。
その議員は、投票箱のある演壇になかなか上がろうとしなかったからだ。
「どうなされました?」
議長のボミルカルが訊ねると、
「熟慮しながら歩んでまいりますゆえ」と言うばかり。
よおく見ると進んでいるのだが、立ち止っているに等しい遅さであった。蝸牛が進むが如くである。
続く議員たちも、のろのろと腰を上げると、前者に倣い、少しずつ少しずつ、行程を惜しむが如くに足を進めた。
「お早く投票願います」
議長の声も無視を決め込み、遅々と行列をなした。
バルカ党は、議事の妨害に打って出たものだった。
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