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−これまでのあらすじ−
アルプスを越えイタリアに攻め込んだハンニバルは、カンネーの地でローマ軍を包囲撃滅(紀元前216年春)。その勢いを駆ってローマ最大の同盟国シラクサを味方に付けることに成功(紀元前215年初頭)。
その後のシチリア島の動乱、マルケルスの攻撃にも、ヒッポクラテス兄弟、マニアケスの活躍でシラクサ確保に成功(紀元前213年)。ハンニバルは、続いて、ローマに反発するタラスの若者たちを抱き込み、タラス市街を制圧(紀元前212年初頭)。
戦局は再びカンパニアの攻防が焦点となっていくが、タラスより反転したハンニバル、プルクルスらの軍を撃破。プルクルスは南部ルカニアに撤退。グラックス隊との合流を図るが、それを阻止するためハンニバルも軍勢を率いて追撃する。
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「余はプルクルスの軍を追撃する。後は頼む」
ハンニバルは、カプアに対する脅威が去ったと見るや、タウレアと配下のカルタロにカプア防衛を託し、自身はプルクルス追撃のため再び南方に兵力を転じた。
それは、ローマの主力を叩くという当然の行動であったが、ルカニアには難敵グラックスの部隊が展開している。それとの合流を恐れた。
「もし、プルクルスがグラックスと合流すれば、ルカニア人たちにどのような心変わりが生ずるか」
ルカニア地方の大半は、今はハンニバルに服している。が、ローマの勢力が盛り返せば、たちまち寝返りかねない。そんな向背定まらぬ空気が充満していた。
ハンニバルの大軍はルカニア地方に入った。
ある夜。ハンニバルはハンニバル船長を自身の幕舎に呼んだ。
「船長」
「はっ」
「グラックスを討つぞ」
「えっ、グラックスを」
船長は素っ頓狂な声を上げた。
グラックスは、連戦の勝利により、この頃、ローマにおける声望高まり、ファビウスやマルケルスと並ぶ名将と讃えられていた。
「そうだ。グラックスは有能な将。それを討てばローマに痛打を与えることが出来る。プルクルスも、頼る相手を失い、大いに意気を阻喪しよう」
「なるほど」
とはいったが、容易なことではない。
「策はないか。いかなる策も厭わぬ」
少々汚い策略でも構わぬ、ということ。ルカニアの戦況はそれほど緊迫していた。
「そういうことでしたら、ないこともありませぬ」
船長は妖しく笑った。密偵にとって狡猾は必須の素養なのだ。
「どのような策だ」
ハンニバルは僅かに身を乗り出した。
「ルカニア人指導者フラウスを用います」
「フラウス?奴は我らの宿敵ではないか」
フラウスは、ハンニバル勢力のルカニア進出に激しく抵抗し、これまで散々に手こずらせてきたローマ派の指導者であった。
「実は、内々連絡を寄越し、我らに味方したいと意を通じて来ておりまして…」
「ほう」
朗報にハンニバルは隻眼を丸くした。だが、すぐにその目を厳しく細めた。
「大丈夫か?ローマ側の罠ではないのか?」
「その虞は充分にございます。それゆえ…」
船長はある策を囁いた。
「なるほど。ならば安心。うまくいけばグラックスもおびき寄せることが出来るな」
ハンニバル船長は、その夜、陣中を抜け出した。直ちに、謀略を張り巡らしにかかったものに違いなかった。
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