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ヒスパニア平定
翌朝。
ジスコーネ率いるカルタゴ軍は、ローマ軍の追跡を逃れるため、夜通し行軍していた。
奇襲攻撃を脱した後も、さらに、ヘレンニウス、ルキウス率いるローマ重装歩兵隊の伏兵攻撃を受け、散々な敗北を喫した。
「我らの行動が見通されている」
さしものジスコーネも、必死に馬に鞭打ち、血路を開いて逃げ回るしかなかった。
執拗なローマ兵の追跡をなんとか振り切ると、敵の目を紛らすためバエティス川から離れ西へ進んだ。要は大西洋岸に出て、そこから海路ガデスに戻る算段だ。
夜が白々明けると、甚大な被害が明らかになった。また、多くのイベリア兵が離脱したことが分かった。イベリア人は、ここでカルタゴを見限ったのだ。
ジスコーネの手元には、直属の兵ほか五千の兵が残るばかりとなった。
「…さて、この先、どうすべきかの」
ジスコーネ、駆け通しで喘ぐ愛馬の首をしきりにさすりながら、手綱を握っていた。
「この上は、ガデスに戻り態勢を立て直すのみ。なんの、まだまだ挽回出来ます」
マシニッサが磊落に笑ったて見せた。
このヌミディア人の王子は、いかなるときも冷静を失わない優秀な男であった。彼らヌミディア騎兵は、この逆境にもジスコーネを決して見限らず、今も二千の兵で守護してくれていた。
「うむ…」
ジスコーネは頷いた。
(ガデスにさえ戻ることが出来れば…)
それが彼の唯一の希望となっていた。海運の便に優れ、物資充分の都市に戻れば、幾らでも態勢を巻き返すことが出来る。その希望に縋り進むしかなかった。
「船は何とかなろうかのう」
ジスコーネは案じた。
兵力大きく減じたとはいえ五千の人間を乗せるには少なからざる船がいる。ガデスから回してもらうことは無論可能であったが、それでは時間がかかり過ぎる。
「ご案じなさいますな。マニアケス殿が先行して手配しておりますれば…」
副官アドヘルバルが言った。
そうこうするうちに、前方から数十騎の騎兵が駆けて来る。
マニアケスたちであった。
彼女は、ジスコーネの馬前に至ると、ひらりと飛び降りた。
「閣下、遅くなりました」
マニアケスは、まず詫びた。
だが、敗軍のために船を確保するのは想像を絶する労苦であったろう。既に、地域の住民はカルタゴ軍敗北を聞いている。となれば、金銀の力も働かず、脅しなだめすかすなど、ありとあらゆる手管を駆使したに違いないのだ。
「いや、ご苦労であった。…して、どうであった、船は」
「なんとか大小数十隻の船を手配しました。御味方全て乗せることができようかと」
「そうか…」
ジスコーネはほっと息を吐いた。
体の底から力が涌く心地がした。
「よし。先を急ぐぞ」
カルタゴ軍五千は再び進み始めた。
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