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※カナリア諸島から望む大西洋です。GNUフリー文書利用許諾書 (GNU Free Documentation License) 1.2に基づいて掲載しています。
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ヒスパニア平定(続き)
ジスコーネ率いるカルタゴ軍は、体に鞭打ち、さらに丸一日行軍を重ねた。
この間、敵は現れず、それが綿のように疲れた彼らに僅かな勇気を与えた。
「皆の者、あと少しだ。あと少しの辛抱で海に出る」
そして、日が高くなった頃。
「ジスコーネ殿!海ですぞ!」
先頭を進んでいたマゴーネが喜悦の声を上げ、前方を指差した。
その声に、ジスコーネ、思わず馬腹を蹴り、馬を飛ばし駆けた。
駆け上がると、雄大な海原が視界に飛び込んだ。
大西洋である。
「おお、やっと…やっと海に出たか!」
ジスコーネの顔も綻んだ。
彼だけではない。穏やかな潮風に、誰もが緊張をここで解いた。
海辺には、マニアケスの報告通り船が繋がれているのが見えた。
「よし、早く船に乗り込み、陸から離れるのだ」
人々は、丘を駆けるように下っていった。なにしろ、あの浮かぶ船に乗りさえすれば、生還出来る訳だ。生あるものとして、喜びを覚えずにはいられなかったろう。
だが、その時であった。
「か、閣下!」
アドヘルバルが愕然とした様子で、北の方角を指差した。
「どうした、そのような顔をして…」
ジスコーネ、苦笑して振り返った。途端、彼の瞳はこれ以上ないほどに見開いた。
「ああっ!」
思わず叫んだ。
そこには、ローマ重装歩兵の大部隊がずらりと並んでいたからだ。
中央に、鷲をかたどった旗が高く掲げられている。それ即ち、ローマ軍司令官スキピオ率いる部隊である。
「馬鹿な!一体どうやって先回りしたのか!」
そう。ローマ軍の夜襲奇襲を振り切り、それから急ぎに急いでこちらに来たのだ。
(足の遅い重装歩兵が先回り出来る筈がない…なぜだ)
無論、これには理由がある。スキピオは、敗れたカルタゴ軍が西方に進路をとると予測すると、こちらにまっすぐ進んで来たという訳だ。
そのスキピオは右手を上げた。
「さあ、勇敢なるローマ将兵よ、闘志を見せよ!」
若き司令官の鼓舞に、ローマ軍団は、高らかに雄叫びを上げ始めた。
そして、ざっとざっと草を踏みしめジスコーネたちに向かって来る。
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