|
https://novel.blogmura.com/novel_historical/ にほんブログ村
↑
ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)
ヒスパニア平定(さらに続き)
「閣下、とにかく急いで船に!このままでは包囲されてしまいます!」
マニアケスが叫んだ。
そして、彼女は傍らのマシニッサに早口でこういった。
「申し訳ないが、閣下の乗船する時を稼ぐため、敵を暫時食い止めてもらいたい」
無理は百も承知であった。だが、今、味方でまともな戦闘力を保つのはヌミディア騎兵しかなかった。歩兵は誰もが疲れ果て傷つき、とても戦うどころではない。マシニッサの戦力に頼るしか方法がなかったのだ。
だが、この男は任侠富む人物。
「承知した。我らの武勇をローマの弱兵どもに見せつけて御覧に容れよう」
胸を叩いて快諾すると、騎兵を引き連れ、敵の隊列に向かって突撃していった。
はじめ、勇猛果敢なヌミディア騎兵の突撃に、隊列を崩しかけたローマ軍団であったが、兵力で圧倒的に優位に立つ。騎兵を取り囲み、その動きを止めると、形勢は逆転した。槍を一斉に繰り出すと、さしもの騎兵も次々と落馬していったのだ。
マシニッサは、群がる敵相手に勇戦していたが、所詮、衆寡敵せず。最後は、包囲を突破すると、僅かな騎兵を連れ、落ち延びていくしかなかった。
だが、彼らヌミディア騎兵の突撃は無駄ではなかった。
その間にジスコーネは、船に乗ることが出来たからだ。
しかし、船に乗り海上に落ち延びることが出来たのは、彼の他にはマゴーネやマニアケス、僅かな歩兵たちだけであった。殺到するローマ兵に、多くのカルタゴ兵がここで討ち取られ、捕虜となってしまった。
ヒスパニア・カルタゴの軍団は、ここに潰滅してしまったのだ。
ジスコーネ、船上から、陸上の惨憺たる光景を凝視していた。
スキピオの自在の采配により、彼の麾下の将兵たちが次々と駆逐される様を。
ぎりりと歯噛みした。
「プブリウス・スキピオ…まごうことなき強敵となって現れたか」
もはや、面に浮かぶその情念は、かつての同窓を見るものではなかった。それは、年来の宿敵を見詰める形相そのものであった。
「だが、このままではおかぬ。必ず…必ずや雪辱してみせる」
船縁をぐっと掴んだ。
間もなく、敵の全てを掃討したローマ軍団から、高らかに凱歌が沸き起こった。
馬上進むスキピオに将兵の歓呼が降り注いだ。
だが、彼の視線は海の彼方に向けられていた。
はっきり陸地の姿が見える。アフリカ大陸だ。
(これからだ…これから本当の戦いが始まるのだ)
彼の頭脳は、人々より先に向けられていた。
次なる舞台は、そのアフリカ大陸にあった。
スキピオは早くも心にしっかと刻んでいた。
第9章ヒスパニアの章終わり。第10章アフリカの章へ続く
|