新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 軍師を所望(続き)
「そなたがおらぬようになって、事を諮る臣がおらぬようになった」
 大王はぽつりと言った。
 確かに、アンティオコスの周囲には、優秀な武将は綺羅星の如く集まっていた。だが、参謀となると、甚だ心許ないことに名を挙げることが出来ない。アポロパネスがそれに該当したが、その彼が病に臥せってしまっている。



 アポロパネスは頷いた。
「そのことについては、わたくしめも案じておりました」
「ほう…」
「陛下は大変御聡明。ですが、そういう御方こそ不意の事変に足をすくわれる恐れがあります。良き軍師が必要でございます」
「そのことよ」
 大王も同意を示した。そのために、ここに来たのだ。
 人間とは先天的にしくじる存在。どんなに優秀な人間も必ず失敗する。それを少なくし予防するには、自分とは違う他人の頭脳が必要なのだ。




「誰かおらぬか。異国にある者でもよい。すぐさま招聘しよう」
 これは難問であった。
 アンティオコス大王の眼鏡に適う、というのは相当程度の高い人物が必要。政治に軍事に精通している人材でなければならぬ。となると、地中海世界広しといえども、希少な存在に違いない。
 アポロパネスは蒼白い顔に微笑を浮かべた。
「一人おります」
「誰だ?」
「ハンニバルにございます」



 それからしばらくして。重臣アポロパネスは死去した。
 侍医の身で権臣ヘルメイアス誅滅の大事に身を賭し、その後、王国の再建に尽力し、セレウコス王家の再興に貢献した忠臣がこの世を去った。
「彼は、良き薬だけではなく、良き言葉を余に与えてくれた。そして、言葉通りの勇気を我が身をもって示した。まことに名医にして名臣。彼の名を忘れてはならぬ」
 大王は大いに顕彰した。

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