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※↑ハンニバル・バルカの胸像です。
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待ち人来る(続き)
「陛下」
艦隊司令官ポリュクセニダスが現れた。
ロードス出身の彼は、大王の進出を渋るロードス相手に、地縁血縁にもの言わせ、大艦隊をエーゲ海域に引き入れる事に成功し、大王のイオニア攻略に多大な貢献をした。
「あの御仁がやって来ましたぞ」
ポリュクセニダスは頬を紅潮させていた。
「来たか」
大王の瞳も輝いた。
それは待ち人である。密かに招請していた人物が、帝都アンティオケイアを経て、こちらに海路やって来たという。都にいる次男セレウコスより先に通報が届いていた。
(見知らぬ人との出会いに、このように胸ときめくのはいつ以来であろうか…)
「謁見の間に通せ」
「ははっ」
大王はディアデマ(王環)をきりりと巻き直すと、謁見の間に入り玉座に着いた。
やがて、その人物が入口に立った。
隻眼である。深紅のマントをまとい、一人の美貌の人物を連れている。
すっすっと前に歩んで来る。
(これがあの著名な…)
(大ローマを滅亡の淵に追い詰めた…)
重臣たちも興味津々の視線を注いだ。
その人物は大王の前に来ると跪いた。
これが、ヘレニズム王朝の君主の前に出る作法。ペルシア宮廷の流儀を、アレクサンドロス大王がそのまま取り入れたものである。
「ハンニバルにございます」
その人物は言った。
「早速の拝謁を賜り、ハンニバル、恐悦至極に存じます」
流暢なギリシア語で挨拶した。
「顔を上げられよ」
大王は玉座の上に優渥な笑みを浮かべた。
「貴殿の英名、地中海世界に轟いておる。先の戦いは敗戦に終わったが、それは祖国の後押しの少なさによるもの。余はそなたに必要なもの全てを与えるであろう」
アンティオコスは、いきなり絶大な信任を見せた。
その言葉に、ハンニバルも隻眼を僅かに見開いた。
「ありがたきお言葉。これよりハンニバルは陛下の臣。微力を尽くし、御国のために邁進する所存」
それは、アレクサンドロス再来と謳われるアンティオコス、そしてアレクサンドロスに劣らぬ稀代の名将ハンニバル、両者が手を携えた瞬間であった。
第12章アジアの章終わり。第13章世界帝国の章へ続く。
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