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渡りに船(続き)
謁見の間に入ると、そこには予想通りの人物が控えていた。
「やはりそなたか」
「お久しゅうございます頭領様」
にこりと笑ったのは執政官ラエリウス夫人のミルト。そう表現したのは、彼女があたかもローマにあるかの如き平服姿であったからだ。
「その姿で来たのか」
「はい。戦いの時は終わりましたゆえ」
「…それで、降伏しろと言いに来たか」
「いいえ。まずはこれを御覧ください」
ミルトは恭しく書を差し出した。
「これは…?」
「スキピオ閣下の親書にございます」
「…大王宛のものか」
そう訊いたのは、スキピオが只今ローマ国家最大の実力者。だから、親書と言うからには名宛人は当然大王その人と思ったからだ。
「いえいえ。頭領様宛てにございます」
「なに、私に」
マニアケスは驚き、すぐさま親書を紐解いた。
『ローマのスキピオ、マニアケス殿に一筆進上す』
マニアケス、くすとした。
柔弱な貴公子だった彼が、いつの間にかローマ最大の武将・政略家に成長しているのが、何か不思議であり面白みを醸し出す。
『そこ許のかつての同志ミルトの言葉に従い、我が陣営に参るがよい。今度こそ明日の平和を語るとしようではないか』
文面はこれだけであった。
(彼らしい…)
かつて、彼は、アルキメデス救助のため、テレクレスを介し説得を試みて来たことがあった。あの時は親友テレクレスの雄弁を信頼した。そして、今は…。
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