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渡りに船(さらに続き)
「ミルトよ。そなたの主は、そなたの話を聞け、とある」
つまり、この手紙は、ミルトがスキピオの使者であることの証明書に過ぎない。その者の語る言葉が、自分の語る言葉として受け止めてもらって結構ということ。
ミルトは頷くと、用意していた言葉を発し出した。
「是非ともスキピオ閣下の前においで下さいませ」
「降参人として…ということだな」
マニアケス、噛んで含めるようにしていった。
「いえ」
ミルトは即座に首を振った。
「軍使としてにございます」
「軍使とな?」
怪訝な眉を浮かべたマニアケスであったが、すぐに得心した。
(そうか…さすがスキピオ)
軍使ならば、戦場の掟として、身体の安全が保証される。つまり、対等な存在として語り合いたい、そういうことなのだ。
「そうでなければ、虚心坦懐、明日のことを語ることも出来まい、と仰せ」
(ふむ…支配者として臨む腹積もりではないようだ…)
帝国存続はこの一事で確信出来た。だが、もう一つ確かめておかねばならない。
「大王に味方した人たちはどうなる」
そのことだ。アンティオコス大王の陣営には、アイトリア人やエピロス人などのギリシア人、そして、ハンニバルなどの亡命者が多数身を投じている。
その人たちが、全てローマの陣前で断罪されるとあらば、和平そのものが揺るごう。
「許される余地なしということならば、その人々は抗戦するしかあるまい」
これに対してミルトは、
「無論処罰される人もおりましょう。が、希望をもってお話し合いに臨むべきかと」
とだけ述べた。越権に繋がる断定的な見通しを慎重に避けながらも、そう言った。
「だからこそ、わたくしが参ったのでございます」
語気を強めた。
マニアケスは彼女の瞳をじっと見詰めた。ミルトのまっすぐな視線を返って来た。
それは、言外に何かを期待してもよい、そう訴えかけるように。
マニアケスは頷いた。
「…分かった。明日そちらの陣を訪れる旨、スキピオ殿に伝えよ」
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