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二人の述懐
翌日の日も高くなった頃。
マニアケスは、ただ一人、ミルトを伴ってアクロポリスを下っていった。
麓のサルディス市街に入ると、ローマ軍とそれに味方する周辺諸国の軍勢で埋め尽くされていた。ペルガモン王国、ロードスは勿論、アカイア同盟、カルタゴ、マケドニア、ビュティニア、エジプト、その他ギリシア人都市国家諸国の旗が所狭しと翻っている。
そう。諸国はローマが勝利を掴んだと知り、競って集まって来たのであった。
「事は決したか…」
マニアケスは思わず嘆息した。
彼女が半生を賭け戦い続けたローマ国家。眼前の光景は、そのローマが地中海世界に覇権を打ち立てたことをまざまざ示していた。
「これからは平和の時代となるのです」
対照的にミルトは穏やかな笑みを浮かべていた。
「平和か…我らは用済みになるぞ」
マニアケスの苦笑に、ミルトはこくと頷いた。
「そうなりましょう。ですが、密偵など不要な世こそ安心して暮らせる世。ならば、私はその方が良うございます」
それは、平凡な日常を求め、マニアケスの許から逃れた彼女の赤裸々な本音であった。
「そうか…そうだな」
マニアケスは呟くように繰り返し、彼女を待つ人物のいる迎賓館に歩いていく。
マニアケスは軍使として招き入れられた。
左右に同盟諸国の司令官、上席には軍団長ドミティウス、ペルガモン王国エウメネス二世、アカイア同盟司令官ディオファネス。
そして、中央に総司令官のルキウス・スキピオ、その隣にスキピオ・アフリカヌスが座っていた。
マニアケスは深々と頭を下げた。
「シリア王国の将マニアケスにございます」
「よく来たな」
スキピオはニヤと笑った。
思えば不思議な因縁の二人。今やローマ最大の実力者となったスキピオ、他方、ハンニバルの片腕であり大王軍の将としてローマに刃向かい続けて来たマニアケス。本来、二人は宿敵、犬猿の間柄の筈であった。
だが、二人の感情にそんな起伏は微塵も見られない。
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