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ローマ講和会議−エウメネス王の深謀遠慮
紀元前189年初夏。ここローマ。
地中海全域の諸国から使節が集まった。ローマ元老院で、アンティオコス王との和平の条件を詰めるためである。
「もはや世界の事は定まった」
「ローマ国が覇者と決まった」
となると、この会議が新たな世界秩序を決めることになる。とあって、諸国は総力を挙げ選りすぐりの人材を送り込んで来た。
「何としても、王国の存続を確保せねば」
必死の形相であったのは敗戦国シリアの使者アンティパトロスとゼウクシスだけではなかった。戦勝国の側にある国々も同じであった。
「何とか我らの領土拡大を認めてもらわねばならぬ」
特に激しく鞘当てしていた二つの国があった。
ペルガモンとロードスの二国である。
これに訝しむ向きがあるやも知れぬ。先の大戦では、両国は息をぴたりと合わせ、アンティオコス大王の大軍と海陸で戦い、見事勝利を収めた。
だが、アンティオコスの勢力退潮が明らかになった今、両国は勢力拡大を競い合うライヴァルへと変じた。それが国際関係というものだ。第二次大戦の戦勝国アメリカとソ連が戦後長く対峙したのと同じである。否、大戦の最中ですら、アメリカと大英帝国の間では、熾烈な覇権争いが繰り広げられていたのだ。
ペルガモン王国は、国王エウメネス二世自身乗り込んで来た。
対するロードスは冷静沈着な指揮官エウダモスを送り込んだ。
二人は戦勝の功労者でもある。
この両国が、ローマのアジアにおける二大同盟国と位置づけられていたから、二人は大いに歓待された。豪華な宿舎、手厚いもてなし。待遇は群を抜いていた。
元老院の会議が始まり、真っ先に意見を述べる栄誉を与えられたのは、そのエウメネスであった。
「ペルガモンのバシレウス(王)よ、元老院より受け取りたいものを何なりとおっしゃってください。あなたの希望については、最大限叶えられるよう取り計らいますから」
破格の申し出であった。ローマ元老院や上流人士たちが、いかにエウメネスに好意熱情を抱いているかを示してあまりあった。ペルガモンは、父アッタロス一世の治世より親ローマを国是とし、マケドニア、シリアと戦い続けたローマ同盟国。
このことが、エウメネス王に対する一種の熱狂を巻き起こしていた。
この時ならば、王が少々無理な要求をしても恐らく通ったであろう。
だが、この王は違った。
「もし、ローマ以外の国よりそのような申し出があれば、私が思い上がった要求をしないようローマの人々に相談したことでしょう。だが、他ならぬローマの人々よりその申し出を受けた今、ローマの人々に委ねることが最善であると思います」
謙虚な言動に終始した。
むしろ元老院が物足りなく思うほどで、一人の議員が立ち上がり、
「遠慮なく申し出てほしい。元老院としては、感謝の意を表するため、可能なことは何でもするつもりなのであるから」
と添えたが、それでもエウメネスは要求をあからさまにすることはなかった。
王は、そのまま退出してしまった。
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