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ローマ講和会議−エウメネス王の深謀遠慮(続き)
これは、決してエウメネスの無欲や自制ということではなく、彼の遠謀深慮の一つであったろう。彼には大きな願望があったからだ。それは、
「セレウコス朝と並び立つ王統を確立したい」
ということだ。
父アッタロス以来の大望。とすれば、この機会を逃すつもりなどなかった筈だ。
ただ、その大望をあからさまに当然の如く要求する態度に出れば、ローマ人の気分が一変しかねないことを彼はよく知っていた。
(ローマ人というのは、任侠に富み、敵には決して屈せず、服する者はかつての敵であっても労る。傲慢と見られては、当然得られる戦果も得られぬ)
アイトリアに対する態度を見れば一目瞭然。同盟者であっても、思い上がる者に対しては、ローマは決して報いることはない。それがローマ人の性根、美徳なのだ。
(となれば、ここは謙虚に振る舞うことが得策。ローマ人の心を掴むことに注力せねばならぬ)
そういうことで、ローマ来訪以来、振る舞いに細心の注意を払っていた彼なのだ。
そして、それは見事に功を奏した。
「今一度、エウメネス王を呼び、意見をお訊ねしよう」
元老院は決定すると、再び王を招いた。
元老院より重ねて意見を求められた王は、ならばと、ようやく口を開いた。
「一つ、懸念していることがあります」
それが何かと問われると、
「ロードスのことです」
議場はざわついた。
ペルガモン、ロードス両国が牽制し合っているのは分かっていたが、エウメネス王が、これほどはっきりその国の名を口にするとは思わなかったからだ。
「ロードスは、真の目的を秘し、こう申すでしょう。ギリシア人の独立と自治の回復こそがローマの大義である、と」
アンティオコス大王にアジア干渉の資格なしと反論されても、ローマはギリシア世界解放を大義の旗に戦い続けた。イストミア布告の恩徳を施したローマであるから、アジアに攻め込む軍団の頭領となることができた。
だから、これは全くその通りというしかなかった。
「だが、その原則を貫徹すれば、ロードスは、大王支配下の都市だけでなく、我が支配下にある都市全てを持ち去ることでしょう。独立を果たした都市は、名目上はロードスの同盟者となりながら、実質はその支配下に置かれることになるのです」
「どうか、一方の友人を不当に持ち上げ、他方の友人を軽んじる結果とならぬようしてもらいたい」
エウメネスの論旨は明らか。
ロードスの主張を全て認めると、アンティオコスから解放された都市ばかりか、エウメネス支配下にある都市も自立し、全てロードスの支配下に収まってしまう、ということ。即ち、アジアからエーゲ海にかけて海上の大勢力が誕生する、という警告なのだ。
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