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降伏勘定(続き)
アンブラキア開城の交渉と同時並行して、ローマとアイトリアの交渉が城外で続いていた。アイトリアの使者は例の如くパイネアスやアレクサンドロスたち。
「アイトリア人は200エウボイア・タラントンを即時に。50タラントンを六年間、総額300タラントンを支払うべきこと」
執政官ノビリオルの賠償金額の提示に、アイトリア側は内心雀躍りした。
(半額になっているぞ…)
そう。かつての二人の執政官グラブリオ、ルキウス・スキピオの要求は、いずれも総額1000タラントンの賠償金であった。今回は総額500タラントン。
(この金額ならば何とかなる)
視線を交わし、頷き合った。
「領土についてはどうなりましょう」
パイネアスがおずおずと訊ねた。
「ルキウス・スキピオ渡航後にローマ側に加わった都市については、今後いかなることがあろうとも領分に加えてはならない」
即ち、紀元前190年春以降、ローマ支配下に入った都市は返還しなければならず、将来も同盟に組み入れることは出来ない、ということ。
(これも悪くない…)
なぜならば、先頃制圧したドロピアやアペランティアという地域も保持出来るということだ。それほどの領土減少ではない。
それゆえ恰幅の良いアレクサンドロスがささっと進み出た。
「直ちに帰国し、和平案受諾のため会議を催し、諸国に諮ります。しばしご猶予を」
「よいであろう。だが…」
執政官は釘を刺すことを忘れなかった。
「貴国とのこれまでの和平交渉は全て破談。ゆえに、あまり時はないと心得よ。返事が遅れれば、直ちにアイトリア領内に進攻を開始する」
彼らは首都テルモスに戻ると直ちに議会を招集した。
「ローマに屈服するのか」
「幾つかの都市が失われることに変わりはないではないか」
反ローマの気風の強い土地柄。幾つかの都市代表から異論も出た。
だが、既にアジアの大勢が決したこともあって、和平を求める声が圧倒的であった。
「もはや勝算はない」
「和睦するしかない」
何よりも、ぐすぐす協議しているこの間にも、事態は急を告げ始めていた。
ノビリオル率いるローマ軍がアンブラキアを進発し、アイトリアに向けて進軍を開始したとの知らせが飛び込んで来た。
「なに、もう進撃を始めたのか」
人々は狼狽した。
そのため、直ちに可決の手続に入り、圧倒的多数の賛成で和平案は了承された。
そして、パイネアスら使節団は取るもの取りあえず、直ちに出立した。
「急げ、急がぬと、領土がどんどん削られるぞ」
和平案によると紀元前190年以降に占領された都市はローマに帰属するのだ。即ち、ノビリオルに占領された都市や土地も永遠に戻って来ないことになる。
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