新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 アパメイアの和約
  さて。ローマにおいてセレウコス朝との講和条約は承認批准された訳だが、まだ諸国はアンティオコス大王と正式に誓言を取り交わしていない。
 紀元前189年は、なお各地で戦闘が散発的に続いていた。
 執政官ノビリオルはケパレニア島攻略のため躍起になっていたし、もう一人の執政官グナエウス・マンリウス・ウルソはアジアに渡り、ガラティア討伐に乗り出していた。
「ガラティアこそ、アジア争乱の元凶の一つ」




 ガラティアとは、アジア(現トルコ)に移住し土着したガリア人のことである。
 彼らは、故郷(現フランス)を離れこんなに遠くまで進出して来ていた。紀元前279年にギリシア本土を侵略し、聖地デルフィの宝物を略奪し、ギリシア連合軍との戦いに潰滅した大部族の子孫たちである。
 ガリア人は、フリュギア地方(現アナトリア中央部)を占拠すると、我が物顔に振る舞い始めた。アジアは小勢力が多く、ガリア人の武力に太刀打ち出来る勢力は皆無であった。頼るべきセレウコス王家も、この頃、内紛やエジプトとの戦いに忙殺されていた。
 いわば空白地帯を占拠した訳だ。ガラティア王国の誕生である(紀元前278年頃)。
 アジア諸国家にとって、彼らの存在は災厄に他ならなかった。ガラティア人は、周辺諸国家を侵略し、乱暴狼藉の限りを尽くした。




「これはたまらん」
 弱肉強食を地でいくガラティアに周辺諸国は音を上げた。仕方なく貢ぎ物を差し出し、服従を誓うことで何とか平和を維持することにした。
 この支配構造は五十年近く続いた。
 このガラティアに対し反撃を開始したのが、ペルガモン王アッタロス一世。
 ペルガモン王家も御他聞に漏れず長らくガラティア王に進貢していたが、それをアッタロスは突然打ち切った。




「蛮族に貢ぎ物を差し出し国家を存続するなど恥辱の極み」
 教養人でギリシア文化の継承者を自負するアッタロスにとって、ガラティア如き野蛮な集団に服従するのは屈辱以外でなかったろう。
「不遜なり、アッタロス」
 凶暴な人種は、獣欲が充たせなくなると見境無く怒り出す。
 だが、アッタロスは充分な戦力を整えて迎撃し、ガラティア軍を撃破した。国家としてのガラティアはここに崩壊した(紀元前227年)。
 アジアの諸国家は歓喜し、アッタロスにソーテール(救済者)の称号を捧げた。
 タウロス以西が、このときアッタロスに一時的に服従した。



 だが、ガラティア人は絶滅した訳ではなかった。その後も幾つかの部族に分かれて存続し、時の強国に従って生き残って来た。
 アカイオスの勢力が伸びて来ると、彼に従った。アンティオコス大王がやって来ると、彼に従った。マグネシアの戦いにも、大王側に参戦し、騎兵やら歩兵を提供した。もっとも、敗色濃厚な展開に一目散に逃走した彼らであったが。



 ローマは、このガラティア人の存在が、アジアの平和を脅かすと判断した。
「ガラティア人を利用する輩が現れる」
 元々、ガラティア人がアジアに渡ったのは、ビュテニア王国の王位争いのため。彼らの武力が利用された訳だ。
「さあ、フリュギアに進むのだ」
 執政官ウルソは、ペルガモン王エウメネス二世の弟アッタロスの援助を受けて山間に進撃した。
 強敵ガラティア相手に難戦が予想されたが、案に相違し、紀元前189年の内にローマの勝利に速やかに終わった。幾つか戦闘があったものの、いずれもローマ軍の勝利に終わり、各部族が降伏を申し出て来たからだ。先進地域に定住して時を経て、かつての勇猛無類な気質が失われていたのやも知れぬ。
 ともかく、ガラティアは完全に平定された。
 こうしてタウロス以西から全ての戦火が終息した。

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