|
[https://novel.blogmura.com/novel_historical/ranking.html にほんブログ村 歴史・時代小説]
↑
ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)
旅立ち(続き)
「ペルガモンが厚く遇され、マケドニアにも領土の分配あることは、両国の働きから当然。ですが、それは隣国ビュテニアには頭痛の種」
近隣に強大な国家があるということは、隣国にとっては、常に切実な選択を迫られるということでもある。
「ふーむ」
「プルシアスは小細工を好む策士。手駒を密かに用意することでしょう。その手駒は多ければ多いと思っている筈。いざという時には、こういうのがあるぞ、と」
「それが…余である…と?」
「これは独り言です。誰に聞かせているつもりもありませぬ」
スキピオは空とぼけた。
「ローマを揺るがした男が手許にある、となれば、マケドニアもペルガモンも野心を抱かぬであろう、と」
要はハンニバルここにあり、となればペルガモン王エウメネスも、マケドニア王フィリッポスも、迂闊にビュテニアに手出しして来ないであろう、ということ。
「ふーむ…なるほど」
頷いたハンニバルだったが、急に笑い出した。
「はは。罪人が追捕の総大将に落ち延び先を訊くなどあろうか…。はは、滑稽な」
間もなく。
ハンニバルは、頭巾を深々と被ると、マニアケス一人を供に神殿を出た。
振り返った。
「スキピオ君、さらばだ」
「おさらばです、ハンニバル殿」
二人は互いの瞳を真っ直ぐに見た。
その時、二人を眩しい陽光が包み込んだ。
スキピオは胸に衝かれたかのように、右手をすっと差し出した。
「ハンニバル、我が好敵手…そして、我が師よ」
その言葉に、ハンニバルの隻眼は大きく見開いた。
大きく頷いた。
「…そう。我が好敵手…そして、第一の弟子よ」
寂し気な笑みが浮かんだ。
背を向けると、神殿の階段を駆け下りていった。
繋いであった馬に飛び乗ると、マニアケスと共に、かっかっと駆け去っていった。
|