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フィリッポスその後−剥げ落ちた仮面(さらに続き)
マロネイア事件は地中海世界を震撼させた。
「わははは、そうか。マロネイアの者どもを懲らしめたか」
悦に入っていたのはフィリッポス五世。
この惨劇の首謀者は彼であった。とかく反抗するマロネイアに対し懲罰を加えるために凝らした陰惨な謀略。
「陛下、大丈夫でしょうか。ローマにばれませんでしょうか」
対照的に顔色を悪くしていたのが、トラキア総督オノマストス。
(主犯とされれば、ローマに連行されるやも知れぬ)
その恐怖に怯えていたのだ。
トラキア撤退は決まっている。そこを劫略しローマが不問に付すとは思えなかった。
「案ずるな。マロネイアの生き残りや他の都市の者どもも、余の恐ろしさを思い知ったろう。ローマに密告する馬鹿者などおらぬよ」
王はふふんと嘯いた。
まさに外道。統治する市民の殺戮に快感を覚える倒錯者。施政者失格。
それから間もなく。案の定、ローマ元老院から使節がやって来た。
使節団の代表はアッピウス・クラウディウス・プルクルス。そう。クラウディウス一門筆頭のプルクルス家の者。紀元前211年の執政官プルクルスの子と思われる。
「マロネイアで市民が虐殺される事件が起きたとか。一体どういうことです。マロネイアは間もなく独立が認められることになっていた筈」
「あれは余の責任ではない」
フィリッポスは弁明した。
「余に心を傾ける者と、エウメネスに心を傾ける者が争い、起こった惨事。マロネイア市民同士の諍いに過ぎませんよ」
そんな風に抗弁し、さらに、
「もし、余に罪を問う者がいるのならば、その者を証人として御呼び頂きたい」
と言い放った。余程、自身の無実の立証に自信があるようだ。
これに対し、プルクルスは冷笑を浮かべた。
「その必要はありません。これ以上の弁明も必要ありません。我らには首謀者も共犯も全てよく分かっているのですから」
「えっ!それは…」
王はうろたえた。
「今日はこれにて失礼いたす」
プルクルスは立ち去った。
翌日、再びプルクルスがやって来た。
「マロネイア事件の犯人が判明しました」
「な、なに」
「トラキア総督オノマストスが事を図り、その配下のカッサンドロスが実行したと調べがつきました」
「な、なんと!」
王は驚愕した。ローマは完全に真相を突き止めていたのだ。
「つきましては、国家の誓約を破った両人をローマに連行したく存じます。直ちに彼らを拘束し、引渡して頂きたい」
プルクルスは、まるで裁判長の如く冷徹に申し渡した。
その眼差しは「本当の主犯はあなただ」と言っていた。
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