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フィリッポスその後−暴政の嵐(続き)
「まだ静まらんのか」
フィリッポスは苛々と重臣たちに訊ねた。
「は。移住先のエマティアでも大変な騒ぎになり、近頃は都も騒がしく」
国民の強制移住は、王国の基盤を強化するどころか、王国の存立すら危うくし出していた。全くの愚策であった。
(このままでは余の身も危うい)
フィリッポスは自身に迫る危険を察知した。迂闊に都の市中を行幸することも憚れる有様。彼を恨みに持つ者が、いつ凶刃を振りかざして来てもおかしくなかった。
こういう危機感は本能に属する。次第に、王は安眠すら脅かされ始めていた。
(寝所も危険だ。侍女や召使いとして入り込んでいるやも知れぬ…)
王は、民衆の呪いの通り、苦悶し出した。まさに自業自得。
(思えば、余に恨みを持つ者は無数にいる…)
そのことを思い浮かべ、脂汗を額に浮かべた。
アラトス親子や、先王の重臣たちに、かつての学友たち。この王は、己の専制権力の邪魔になる者は全て抹殺して来た。当然、王に恨みを抱く遺族はその数倍に及ぶ訳だ。
「こうなれば…」
王の目は血走っていた。
重臣たちは胸騒ぎがした。こういう王の顔からは、ろくな命令が出て来ない。
「余が命じて処刑した人々の子を探し出し、全て拘束せよ」
「えっ!それは…」
重臣たちは絶句した。
何の罪の名目もない。ただ罪人の子どもであったからという理由で逮捕を命じたのだ。
だが、王の顔は青白く揺らいだ。もう、かつての溌剌な君主の面影は消え失せていた。
王は心を病んだ病人の如くつぶやいた。
「父を殺し、その子を生かしておくのは愚者のわざ」
これは、とある詩の一節。
そんなものを持ち出さねばならぬほど、命令の正当性はなかった。
「何を躊躇するか!すぐさまかかれ!災いの種を刈り取るのだ!」
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