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フィリッポスその後−錯乱の末に(さらに続き)
紀元前179年初め。
本当の悲劇はデメトリオス王子の死後に幕を上げた。
「なに…それは本当なのか…」
フィリッポス王は目を大きく見開いた。
王子の粛清後、とみに健康を崩しがちであった彼、顔色も優れなかった。
「は。どうやら、デメトリオス王子のローマ亡命の企みは真実ではなく、どうやらペルセウス王子の…こう申しては何ですが、作り事というのが真相のようにございます」
言葉を濁すように報告していたのはフィロクレス。
「ならば…ならば、余は、ありもせぬ事実を基に息子を害したというのか…!」
王は目を血走らせた。
「それは…」
フィロクレスはうつむいた。
「なんということだ!」
王は血を吐くように叫んだ。
「余は…余は、ありもせぬことで、最愛の息子に手をかけたというのか!」
王はまさに半狂乱となった。
「おおお、神々よ!余に与え賜う罰の何たるむごさよ!」
王は髪を振り乱し悲嘆に暮れた。
衝撃のあまり、王は、これ以降、床に伏せることとなった。
紀元前179年春。
フィリッポスの病状は次第に重くなった。精神的衝撃が、肉体の健康も深刻に蝕み始めていたのだ。
王都ペラを離れ東部のアンフィポリスの離宮へ移った。そして、ペルセウス王子以下臣下との面会を一切断ち、ただただ信頼するフィロクレスを枕元に呼んで政務を任せた。
「フィロクレスよ。余の命はもう長くない」
「何を仰せか。東西南北、遠くアジアに征旅した陛下らしくもない。また、陛下には大望があるはず」
それは打倒ローマの戦いを起こすこと。
「もはやこの体では無理だ。次代の王に期待するしかない」
王は力ない笑みを浮かべた。
「次代の王…」
フィロクレスは唾を呑み込んだ。
その物言いは明らかにペルセウス王子を忌避するものだからだ。
「ペルセウスでは駄目だ。あの酷薄短慮では我が王家は滅亡するしかない」
王は長男に後継者失格の烙印を押した。
ただ、その酷薄短慮の生き様を息子に背中で示したのは、まさに今寝床に横たわっている父フィリッポスの粗暴な振る舞いそのものなのだが…。
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