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アンティオコスその後−信頼を裏切った結末
「なにっ、王家の兵が神殿を略奪していると!」
市民たちは驚いた。
逃げた神官たちが急を告げ回っていたのだ。
「そんな馬鹿な」
市民たちは信じられぬ面持ちであった。
これまでセレウコス王家は穏やかな統治に終始した。ペルシア人やエラム人に対して、信仰の自由を認めていたし、彼らの敬う神々にも相応の敬意も払って来た。
「それが襲いかかって来たのだ」
神官たちは自身の受けた仕打ちを事細かに告げた。
市民たちは激高した。
「放置してはならぬ!」
「迎賓館に向かおう!」
「メガスに抗議せよ!」
抗議に立ち上がった市民はやがて群衆となり、濁流の如きとなって市街を進み、それは二筋に分かれた。一つは神殿に、一つは王の宿所の迎賓館に向かった。
「なに、民衆がこちらにやって来ると」
アンティオコス王は驚き慌てた。
なにせ、身辺を警護する近衛兵を殆ど全て神殿略奪に向かわせていたからだ。今ここに居るのは、数人の側近と警護兵のみ。
王妃エウボイアが、この騒ぎに、寝間着のまま現れた。
「陛下、民衆が何かに怒ってこちらにやって来るとか」
「む、そなたは心配しなくともよい」
「陛下は穏やかな君主。何かの間違いでございましょう」
王妃はにこやかに笑った。
その純真無垢な言葉に、アンティオコスは苦し気な表情を浮かべた。
王妃の信頼は、民衆が抱いていた信頼でもある。王はその信頼を裏切ったのだ。
「陛下、このままでは門が破られてしまいます!」
ムサイオスが青い顔で走って来た。
民衆は、王との面会を求めて門前で怒号を発していた。やがて過激になった一部が門を破りにかかっていたのだ。
「うーむ。やむを得ぬ。長老たちだけを選んで中に入れよ」
「ははっ」
間もなく、ムサイオスと共に、年長の者五人が王のいる居間に招かれた。
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