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来る海上決戦へ(続き)
この頃、ポリュクセニダス艦隊は活発に活動していた。
フォカイアを拠点にローマ・ペルガモン艦隊をしきりに牽制していたのだ。
そこに急使が訪れた。
「なに、ハンニバルが敗れたと!」
「はい。エウダモス率いる艦隊に」
報告していたのは元海賊のニカンドロスという男。提督ポリュクセニダスの右腕だ。
「ハンニバルはどうしている」
「シデに留まっておられます」
「なぜ、こちらにやって来ぬ」
本来の計画は、彼の艦隊がポリュクセニダス艦隊と合流し、それから海上決戦に望む手筈であった。
「ロードス艦隊がケリドニアイにとどまったままですので…」
「ケリドニアイ?」
ポリュクセニダスは一瞬怪訝な眉を浮かべたが、すぐに得心した。
(そうか…ハンニバルを封じ、合流を阻止するつもりよな)
思えば、このポリュクセニダスという人物も不思議な男だ。出自は、歴としたロードス人。だが、若い時、罪を犯して祖国を追われた。
その後、海事の知識を見込まれ、アンティオコスの宮廷に仕官した。
確かに、祖国を追放された訳だから、
(今に見ておれ。大出世して見返してやる)
そんな敵愾心を抱いて、大王の宮廷で立身出世に邁進して来た。
そして、艦隊司令官に栄達。今やロードス最大の宿敵となった。
(不思議な巡り合わせだ…)
この巨漢の提督もしみじみ思っていた。
もっとも、世界制覇を目論むアンティオコス大王がローマと敵対するのが歴史の必然ならば、自由独立を国是とするロードスが共和制ローマと結ぶのも歴史の必然。
だから、艦隊司令官としてアンティオコスの下にあることは、いずれ祖国の敵となる可能性も考慮に含め仕えて来たと言える訳だ。
が、彼は自身を売国奴や祖国の敵などと思ったことは一度もなかった。
先に、サモス島で狡猾な計を巡らし、故郷の艦隊を潰滅せしめたが…。
(あれは窮余の一策。戦いが終われば、故郷の者も感謝するに違いない)
真実そう思っていた。
アンティオコス大王が地中海を席巻した後、自身の功と引き換えにロードス国家の存続を願い出ようと思っていた。
(ならば、故郷にある我が一族も誉れにこそ思え、恨みに思うこともあるまい)
これも不思議な人間心理であった。
自分の行動を都合よく解釈し、帳尻を合わせるために何かしら償う。面白いことだ。
「…して、エウダモスはどこにいるのか?」
ポリュクセニダスは、同郷の最も恐るべき男の動向を訊ねた。
「どうやら、ロードスに戻り、新手の艦隊を率いサモスに向かう模様」
「なに、サモスへ」
提督の眼はぎろりと光った。
(ふーむ。サモスか)
既にローマ艦隊の一部がサモスに入ったと聞いていた。そして、北からペルガモン艦隊が、それに合流すべく出動したことも。そして、ロードス艦隊がサモスに向かう、ということは…。
(このままフォカイアにあれば、イオニア一帯の海域が敵に制せられてしまう)
動き出すのはハンニバルの合流を待ってと思っていたが、そのハンニバルがケリドニアイを越えられぬとあれば、このままでは時機を逸してしまう。
「よし!我らもイオニアへ向かう。全艦隊出動だ!」
「ははっ!」
ポリュクセニダス艦隊も動き出した。
海上決戦は間近であった。
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