新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 ミュオンネソス前哨戦(続き)
「これは敵わぬ」
 残った海賊船は反転し始め南東の方角へ逃げ始めた。要は複雑に入り組んだ入り江のどこかに身を潜めようというのだ。
「逃がすな!」
 レギルスは追撃を命じた。
(奴らが逃げ込んだ近辺に、アンティオコス艦隊の拠点があるやも知れぬ)
 咄嗟にそう思ったからだ。
 執拗な追撃に狼狽した海賊船は、とある入り江を目指して漕ぎ進んでいく。そこは…。




「プラエトル閣下!敵はテオスの港へ逃げ込んで行きますぞ!」
 ミルトが指差し叫んだ。
 海賊たちはローマ艦隊の追撃が執拗で、ついには自分たちの本拠に逃げ込むほかないと泡を食ってしまった訳だ。正体を明かしたも同然だ。
「なるほど…そういうことか」
 レギルスは笑った。
「よーし。テオスを攻めよ!海賊を生業にする不埒な都市!容赦は無用ぞ!」
 ローマ艦隊は港を封鎖すると共に、上陸を開始し、四方から都市を取り囲み始めた。




 海賊たちの逃げ込んだテオスの市内は大混乱に陥った。
 儲け話に浮かれ、うっかり寄せてみたら、手痛いしっぺ返しを喰らった格好。
「大王の援軍を待とう」
 そんな意見も出るには出た。大王軍の拠点エフェソスから、この都市はほど近い。
 が、ローマ軍の強さを思い知った海賊、もといテオスの船乗りどもは首を振った。
「ローマ軍は強い。このまま彼らが怒りに任せ城内に突入して来ては、我らは皆殺しになってしまう」
 海賊行為で、既に充分怒りを買っているテオス市民なのだ。
 喧々諤々の議論の末、使者をレギルスの許に寄越して来た。
「城を明け渡します。それゆえ何とぞ御寛大な処分を…」
 長老たちはローマの指揮官を前に平伏した。





「良いであろう」
 レギルスはあっさり頷いた。だが、と言った。
「アンティオコス軍の兵糧は全て接収する。また、海賊船も全て没収する。逗留中の兵糧補給も全てテオス市の負担で行うように」
 厳かに言い渡した。
「無論にございます」
 長老は即座に了承した。
 都市の存続、市民の生命安全が保証されるならば、どんな条件にも頷いたであろう。
 市内に入ると、予期した通り、大王軍の莫大な兵糧が備蓄されてあった。
「よし…幸先は良いぞ」
 ローマ軍の圧勝、テオス入城が周辺に響き渡ると、ポリュクセニダスがエーゲ海上にばらまいた海賊たちは、瞬く間に姿を消し去ったのであった。

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