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ミュオンネソス前夜(続き)
ポリュクセニダス艦隊は、大陸沿いを北西に進んでいた。
「夜明けには到着するか」
提督ポリュクセニダスは暗闇の海原を見詰めつつ訊いた。
「はっ。万事順調に進んでおります」
「うむ」
前後して、敵艦隊も現れるに違いないであろうと踏んでいた。そこには、ローマ艦隊だけでなく、彼の祖国ロードスの艦隊もいることであろう。
(さぞ余のことを売国奴、国賊と罵っていることであろう)
そう思うと苦笑が浮かび上がる。
(だが、その者どもらを、余の前にひれ伏せさせ、救国の英雄と崇めさせてやる)
唇を噛み締めた。
人間とは、大きな望みを抱いているようで、実は単純な存在でもある。金持ちになりたい、いい女いい男と結婚したい、出世したい、などなど。二千有余年を経た現代も、これとどれほど違うであろうか。
そして、提督の積年の願望は、これまた現代人にもお馴染みのものである。
(冷たくあしらった故郷の者たちを見返してやる)
結局こんな所である。気高く生きる、というのは存外難しい。そもそも志を抱くことも、古今東西、僅かな人士に限られよう。特に、現代のどこぞの国のように、金持ちというだけでセレブリティ(=名士)と呼ぶ如き品のない時代にあっては…。
ローマ艦隊、ロードス艦隊、そして、ポリュクセニダス艦隊。
全てが焦点の海域に集まり始めた。
ローマ共和国とその同盟国、そして、アンティオコス大王の帝国、両勢力の命運を決する海上決戦の時が刻々迫っていた。
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