新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 エウリュメドン川(さらに続き)
「閣下、急いで進まねば」
 マニアケスも焦燥を見せていた。
「いや…」
 ハンニバルは首を振った。
「こうなれば一戦避け難し」
 ケリドニアイ群島まで接近しているとならば、その鋭峰をかわすのはもはや不可能。なれば、慌てて前進するのではなく、有利な地形海流潮流気候で戦う方が望ましい。
「エウリュメドン川の河口で戦う」
 エウリュメドン川とは、パンピュリア地方中央を流れる大河。
 河口を少し遡った地点に、地域の主都セルゲという街がある。




「河口で…。それでは潮流が」
 マニアケスは案じた。
 河口一帯の潮の流れは、河流の影響で不規則な影響を受ける。艦隊の指揮に支障が生じかねなかった。
「それが狙いよ」
 ハンニバルは微笑した。
 海流潮流の予測の利く海域では経験に勝るロードス人が圧倒的有利。
「だが、予測の付きにくい所ならば…。経験はさほど役立たぬ」
 海戦の手練手管では海の達人ロードス人には敵わない。だから、敢えて予習経験の利きにくい海域を戦場に選ぶ必要がある、ということだ。
 そして、ここはかつてペルシア戦争終盤で、ギリシア艦隊がペルシア艦隊を撃破(紀元前466年)した地。その戦史も熟読していたハンニバルであった。




 ハンニバルは直ちに将を集め軍議を催した。
 だが、ハンニバルが司令官の場合、それは作戦方針を伝えるものであるに過ぎない。
「諸君は、我が艦隊が勝利する時を稼いでもらいたい」
 ハンニバルは言った。
 即ち、一翼はハンニバル自身が采配を振るい、もう一翼はアポロニアスを指揮官とする。だが、アポロニアス艦隊は敵艦隊の攻勢に耐え、ハンニバルの勝利までじっとしてあること、これが取り決められた。

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