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−これまでのあらすじ−
東方を制覇したアンティオコス大王は、ギリシア世界の制圧を目指して西進。ローマと対立。ついに開戦。
デメトリアスに上陸し(192年秋)、エウボイア島に進攻、ローマ軍駐屯地カルキスを攻撃し、これを攻略。
だが、アンティオコスが外交攻勢に夢中になる隙にローマ軍はラリサを占領。
年明け(191年)、アンティオコスは北進するも、ローマの大軍を前に会戦を断念。テルモピュライの要害に立て籠もり長期戦に持ち込むも、カトー隊がアンティオコスの背後を急襲。アンティオコス軍は大敗。
アンティオコスはアジア(小アジア)に撤退。
190年春。ルキウス・スキピオが執政官就任。兄スキピオと共にギリシアに来航して指揮官着任。
速やかにアイトリア同盟と停戦すると、マケドニアを通過しアジア方面へ進撃開始。
他方、アンティオコス大王のペルガモンの包囲作戦は、エウメネス王らの抗戦により失敗。
エウダモス率いるロードス艦隊が南下。大王との合流を目指すハンニバル艦隊を撃破すべくアジア南岸を進んだ。
エウリュメドン河口の海戦−上
紀元前190年初秋、とある日の未明。
ロードス艦隊はケリドニアイ群島まで進んでいた。総司令官はエウダモス。ペルガモンでの勝利の後、大急ぎでこちらに急行して来た。
「なに、ハンニバル艦隊はエウリュメドン河口に集結していると」
エウダモス、目を光らせた。
「して…敵艦の数は?」
「およそ五十隻」
「ほう。随分と少ないな」
百隻ちかく膨れ上がっていると聞いていたからだ。そのこともあり、この群島地帯の要衝で小休止していた。かつて、ここを防衛線として、アンティオコス艦隊の西進を阻止したこともあること。
「半数はシデ市に残してあるようで」
「なるほど…噂通り用心深い男だな」
エウダモスは頷いたが、頬を紅潮させていた。
エウダモスは、前任の司令官パウシストラトスがポリュクセニダスの計にかかり艦隊潰滅の憂き目にあった後、ロードス市民に次のエースとして起用された。つまり、知勇兼備の冷静沈着な将である、と。
だが、只今この時、その彼ですら逸らずにはおれなかった。
(エウリュメドン河口…これは絶好の戦機)
なぜなら、脳裏に過去の戦史が甦って来たからだ。
ギリシア艦隊がペルシア艦隊を撃滅した故事が。あの時も、河口に係留するペルシア艦隊を急襲し、一気に勝負を付けた。つまり、陸地を背にした艦隊は脆弱であるという、海戦の教科書通りの結果を証明した訳だ。
(敵艦の数も少ない…これを見過ごす手はない)
「よし、進むぞ。夜明け前に急襲だ」
エウダモスがすっくと立ち上がった。
「待て」
止めたのは同僚で副司令官のパンピリダス。
「我らの艦隊もまだ集結が終わっておらぬ」
そう。一列縦隊で進み、今、十隻の軍船が先頭にあるだけなのだ。
「後続の船隊は君に任せる」
「それでは勝負にならぬぞ」
「未明に急襲しハンニバル艦隊を大混乱に陥れる。これだけならば少数の船で充分だ」
エウダモスは笑みを見せた。
元々、ロードス人は少数の船で戦うのを得意としている。東地中海、エーゲ海、ポントス海(黒海)の航路の守護者として、海賊やら都市国家との戦いは、少数の船隊同士の戦いにならざるを得ない。従って、小回りの利く戦いは、ロードスの将であれば、誰もが得意としていた。
「そなたには、我らが追い散らした敵艦隊を撃滅してもらいたい」
エウダモスはそう命じた。
よほど自信があるに違いない。そう命じるや、彼は、旗艦を率いてまっしぐらに前方に進んでいったのだ。
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