新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 ミュオンネソス岬の海戦−歩兵激突戦(続き)
「急げ!急いで前を向くのだ!」
 提督は喚いた。
 だが、当時の軍船の方向転換は手間取った。漕ぎ手が将校の合図に合わせ漕ぐ訳だ。しかも、大王軍の戦闘艦が軒並み巨艦揃いで、しかも岬近辺に密集していたことも、方向転換を一層厄介な作業とさせていた。自分の艦を動かすには、隣の動きを待たねばならないという艦も多かった。
 その混乱の最中に、ローマの軍船は波を蹴立てて進入して来る。
「それっ!」
 ローマの戦闘艦一隻が、大王軍の軍船一隻の船腹に衝角を思い切りぶつけて来た。
 どおんという轟音の次に、ばりばり船体を破壊していく。




「うわっ!」
 甲板上の大王軍の将兵はよろめいた。
 すかさずグラディウス(イベリア剣)を閃かしたローマ兵が海上高く跳躍した。落ちれば溺死するしかない潮流。まさに命知らずの勇猛だ。
「迎え撃て!」
 大王軍の兵も雄叫びを上げ、槍の穂先を揃えた。
 たちまち激闘となったが、狭い甲板上の接近戦。ローマ兵は無類の強さを発揮した。彼らの手にした鋭利なグラディウスは絶大な威力を発揮した。
 対する大王軍の将兵はギリシアの伝統的な長剣や長槍を手にしていたが、接近戦では間合いが長過ぎる。懐に飛び込まれては、まるで役に立たないのだ。




 大王軍の兵は、躍りかかるローマ兵が繰り出すグラディウスに、獲物を両断され、身体を突かれ、斬られた。
「わっ!」「ぎゃっ!」
 ローマ兵はあっという間に敵の抵抗を蹴散らし、間もなく凱歌を上げた。
 軍船一隻を捕獲してのけた。
 その後も、船腹に激突した戦闘艦から次々ローマ兵が踊り込み、同じように船を分捕っていく。あたかも陸上を駆け回るように、野戦の上手ローマ兵の本領発揮であった。




 こちらローマ艦隊司令官レギルスの旗艦。
 ここにはなおも五十隻の戦闘艦が待ち構えていた。
「提督!ポリュクセニダスの船団が乱れ立っていますぞ!」
 ミルトが前方を指差した。
「よし!今こそ勝負!」
 レギルスは抜刀し叫んだ。
「全艦隊、前進せよ!」
 ラッパの音が鳴り響くと、戦闘艦五十隻が一斉に漕ぎ出した。
 混乱した敵船団を包囲し、一挙に勝負を決しようとしたのだ。

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