新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 ミュオンネソス岬の海戦−包囲撃滅戦術(続き)
 ポリュクセニダス。敵のてきぱきとした展開に目を細めた。
「さすがだな。見事な采配」
 そう言いながらも余裕綽々、笑みすら浮かべていた。
 何といっても、海戦の巧者エウメネス二世王を出し抜いたことが大きかった。
(奴が間に合わぬのは大きい)
 エウメネス王は、マケドニア王フィリッポス五世との海戦を父アッタロス王の下で経験し、先のキオス島沖の海戦を陣頭指揮している。経験豊富にして冷静沈着な海将。
 その強敵が不在なのだ。




(ということは…)
 提督の鋭い視線は沖合に向かった。
「よし、余は左翼でローマ軍に当たる。ニカンドロス、そなたは右翼でロードス艦隊に当たれ。但し、相手は手練のエウダモス、迂闊に寄せるな」
 敵の中核はローマ艦隊。レギルス率いる船団さえ撃破すれば全軍の勝利なのだ。
「ははっ」
 ニカンドロスは小船で別の軍船に向かった。




 やがて、ポリュクセニダス率いる船団はニカンドロスの船団と離れ、沖合に大きく張り出し始めた。
「さあ、敵艦隊を沖から包み込め!」
 船数で優位に立つポリュクセニダスの船団、数を活かした作戦に打って出た。
 これはマニアケスの進言でもあった。
「我らが数では優位。カンネーをご参考になさるべきと存じます」
 カンネーの会戦は、両翼を撃破して敵を包囲し殲滅する作戦。あのときハンニバル軍はローマ軍に比べ少数であったが、騎兵戦力を駆使して両端を破り、包囲隊形を完成させ、史上稀に見る大勝利を上げた。
 海上では騎兵と歩兵の区別はないから、敵の端を撃破するには、両翼を広く伸ばすことの出来る軍船の数が必要になる。
「端から敵艦隊を崩して包囲し、陸地へ追い詰めるべきと存じます」
 軍船の弱点は、背後に陸地を抱えると途端に機動性を失うこと。即ち、数の優位を活かして端から崩して包囲し、敵軍船を陸地へ追いやる作戦だ。




 ポリュクセニダス、舳先に立ち、海原に向かって叫んだ。
「さあっ!もっと左に大きく翼を伸ばすのだ!」
「陛下に我らの戦いぶりをよく御覧頂くのだ!」
 ここぞと鼓舞した。




「せい!」「おう!」
「せい!」「おう!」
 漕ぎ手の勇ましい声が、階下で響く。
 漕ぎ手は奴隷であることが多いが、ポリュクセニダスの旗艦である巨大戦艦の漕ぎ手は全て自由市民で構成されていた。当然、戦勝の暁には褒賞が与えられるとあって、士気はすこぶる高い。
 ポリュクセニダスの船団は、左右に大きく船列を伸ばし、両端の船団はやや前にせり出す、いわゆる鶴翼の隊形をもって、ローマ艦隊にまっすぐ向かっていく。

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