|
[https://novel.blogmura.com/novel_historical/ranking.html にほんブログ村 歴史・時代小説]
↑
ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)
決戦の勧め
ここパンピュリア地方の都市シデ。
ハンニバルは、未だここに足止めを食っていた。というのも、パンピリダス率いるロードス艦隊がケリドニアイ群島にあり、断固通過阻止の態勢を取り続けていたからだ。
「そうか…ポリュクセニダス殿は敗れたか」
ミュオンネソス岬の敗戦の報が届いた時も、そう言っただけであった。
彼には動く訳にはいかない事情があった。ここが破れると、ロードス艦隊はキリキアを経てシリア中枢に海路押し寄せる恐れがあった。そうなれば、サルディスにある味方は総崩れになるしかない。帝国存亡の危機に陥る。
(そうなれば、タウロス以西では済まぬ。対等な和平など到底不可能となろう)
そのハンニバルは、今日も港湾に浮かぶ戦闘艦の上にあった。戦機到来すれば直ちに出撃、その気構えは日々配下の将卒に示しておかねば、穏やかな日々に緩んでしまい、いざという時に役に立たぬからだ。
「閣下、マニアケス殿がお見えになられました」
「…来たか」
そのマニアケスから逐一報告が届いていた。
ミュオンネソスの敗北、その後の和平交渉。だから、主戦場から遠く離れていても経過は熟知していた。この用意周到こそが、ハンニバルの緻密な判断を支えていた。
(自身やって来たということは…)
人並み外れた勘の持ち主ハンニバル、足取りも自然と速くなった。
本営の一室に、王国の役人の姿をした男装のマニアケスがいた。
「閣下、お久しゅうございます」
「遠路ご苦労。どうであったか」
無論、スキピオとの和平交渉の顛末のことである。
「はい。スキピオが申しますには…」
マニアケスは一部始終を話した。スキピオの息子の身柄解放と引き換えに、大王側に有利な計らいを依頼したことも。対して、明確に拒まれ、ローマに対する無条件降伏を促されたことも。
「…そうか。スキピオはそう申したか」
「はい。陛下に報告する前に、いかにすべきか直々御判断を仰がんと思い」
そう。マニアケスは、アンティオコス大王に真っ先に報告すべきところ、正使ヘラクレイデスにはなるべくゆっくりサルディスに戻ってくれるよう頼む一方、自身、こちらに急行したという訳であった。
スキピオに勧められるまでもなく、和平交渉が頓挫すればハンニバルの意見を聞くつもりであった。
|