新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 スキピオ、病を得る(続き)
「心配いたすな。必ず勝てる」
 兄は大きな笑みを浮かべた。
 そこには、勝利を確信した時の、煌めく眼差しがあった。
「敵は大軍とはいえ四方より掻き集めた寄せ集め。一点を破ることのみを思え」
「一点?」
「そうだ。一箇所が破れると、恐らく雪崩を打って潰乱する筈。それが寄せ集めの大軍の弱点だからだ」
 さすがスキピオ。正鵠を射ていた。
 寄せ集めの兵力は、優勢もしくは互角に戦っている間は勇敢に戦うが、敗勢になれば連帯心や忠誠心が乏しいため、どうしても我れ先に逃げ出してしまいがちとなるのだ。




「ドミティウス殿がそなたの良き助言者となろう」
 スキピオは言った。
 軍団長ドミティウス。紀元前192年の執政官で、フラミニヌスの推挙で今回取り立てた。平民出身の指揮官だ。
「ずっと観察して来たが、軍のことをよく心得ておられる。また自制も利く御仁」
 平民出身の指揮官について、最も心配すべきことは暴走である。叩き上げで執政官に登り詰めた男なのであるから、優秀なのは分かっている。あとは、己の功名に駆られ自制心を失わないか、強い心を保てるか、それだけだ。




「彼ならば、そなたの良き参謀となろう。彼を頼め」
(兄がこのように人を薦めるのは珍しいこと…)
 本来ならば、スキピオ兄弟の知友にして知勇兼備の将ラエリウスがここにあればと思うが、そのラエリウスはルキウスの同僚執政官として本国ローマの守備に回っている。
「分かりました。ドミティウス殿の意見を訊き、軍の采配をとることにしましょう」
「頼む。私は、なるべく敵の動きを鈍らせるよう工夫するゆえ」




 数日後。
 ルキウス・スキピオ率いる二万七千の軍勢は南下を再開した。
 海岸沿いを進み、いよいよリュディアの中心ヘルモス川流域へと進攻した。

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