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初物
紀元前190年12月。
ルキウス・スキピオ率いるローマ軍、続いてエウメネス二世率いるペルガモン軍、アカイア同盟の軍勢、総勢二万七千の兵力がヘルモス河畔に姿を現した。
軍勢は、慎重に北岸沿いを東へと進んだ。やがて、支流のリュコス川との合流地点に到達した。
「コンスル閣下」
エウメネス二世が右を向き、南に天高く聳える山を指差した。
「あれがシピュロス山。その麓に広がるのがマグネシアです」
エウメネスは、かつてこの地を訪れたことがある。それは父アッタロスと共に、アカイオス滅亡作戦に従事した折。あの時、アンティオコス大王(三世)は友軍の将であった。
「ふむ。敵は南岸に強固な陣を敷いているな」
ルキウスは目を細めた。
執政官として初の采配。その相手が世界最大の帝国セレウコス王朝。
(勝利すれば国家の英雄…)
身震いがした。兄スキピオに並ぶ栄誉を手に出来るかも知れぬのだ。
「よし。我らもここに布陣する」
執政官の決定に、たちまち副官たちが四方に飛び、陣所の設営が始まった。
真っ先に執政官の幕舎が立ち上がると、ルキウスはすぐさま将を集め軍議を催した。
集まったのはペルガモン王エウメネス二世、アカイアの大将ディオファネス、そして、軍団長ドミティウス以下ローマの将官たちである。
「敵軍の配置はどうなっている」
ルキウスはまずそれを訊いた。
大王軍の陣は、城外にずらりとヘルモス川に並行して設営されていた。
「はい。中央に歩兵の陣所。両翼に騎兵の陣所」
すらすら答えるのはミルトであった。
彼女は味方に先んじて対岸に潜行し、入念な調査を行って来た。
「それは戦いの折の布陣そのものということよな」
念を押すように質したのは、スキピオから弟の助言役を任された軍団長グナエウス・ドミティウス・アヘノバルブス。
「左様にございます。戦いとなれば、そのまま川岸にまっすぐ押し出して参るでしょう」
つまり、寄せ集めの軍勢、しかも言語を互いに介さぬ部隊同士ゆえ、指揮命令はなるべく単純である必要がある。となると、そのまま前進した地点が自分の持ち場というのは至極明快と言えよう。
「あと気になる点が一つ」
「何かあったか」
ルキウスの問いかけに、
「陣所の前にずらりと戦車が並べられていました。恐らくはメソポタミアから駆り集めて来たものでしょう」
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