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ドミティウスとエウメネス(続き)
「どうすれば大王の大軍を破ることができるでしょう」
軍団長ドミティウスは、これまでガリア人との戦いなどで戦功を上げて来たが、これほどの大軍相手に采配しことは一度もない。
「一点を破ることを思い給え」
「一点を…」
「敵は寄せ集め。互いに言葉も解さぬ。一点を打ち砕けば、そこから全体が破綻していくであろう」
「なるほど…」
ドミティウスは唸り声を上げた。
スキピオは敵の陣容を見てもないのに、核心を洞察したからだ。
この時から、ドミティウスの頭脳は、どの箇所を撃破するか、そのことばかりで占められるようになっていた。
ミルトのもたらした情報に基づいて、ドミティウス、地図上に駒を並べていく。
「ふーむ。両翼は騎兵隊」
大王軍の騎兵は、アゲーマと呼ばれる帝国の精鋭中の精鋭。それが六千。
(これを破るのは容易ではあるまい…)
「中央はファランクス(歩兵隊)か」
調べた所によると、歩兵の総数は一万六千。それを1600人の隊に分けて左右に十個に並べ、しかも、五十人が三十二列という分厚い隊列をとるらしい。
(これは凄まじいことだ。この隊列を突破するのは難事ぞ)
「その両隣に、象軍二十二頭」
インド象である。ローマ軍の連れて来たアフリカ象と比べ遥かに巨体。
(我が軍の象は使い物にならぬであろう。後方に置かねばならん)
象は、勝ち気の間はいいが、一旦臆病風に吹かれると、象使いの言うことも聞かなくなる。味方の隊列に逃げ込み、見境無く暴れ、味方を大混乱に陥れる。
こう見てみると、自軍の劣勢ばかりが目につくではないか。
(どこを突破すればよいのだ…)
ドミティウスは目を血走らせた。
いつ戦闘突入となるか分からないのに、指揮官が明確な戦術を立てられずにいる。焦らずにはおれない。
と、その時、ミルトが入って来た。
「レガトゥス(軍団長)閣下」
「お、どうなされたミルト殿」
口調が丁寧なのは、ミルトが現執政官ラエリウスの奥方であり、何よりもスキピオ兄弟の信頼する配下であるからだ。
「エウメネス王がお越しになられました」
「なに、エウメネス殿が」
執政官の許ではなく、その配下である自分の幕舎に直々訪れたことが意外であった。
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