新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 ドミティウスとエウメネス(さらに続き)
 現れたのは眉目秀麗のエウメネス。
「夜分、失礼いたす」
「いえいえ。いかがなされましたか」
 ドミティウスは丁寧に席を勧めた。相手は同盟国の君主である。
「恐らく、貴殿も同じことを悩んでおられるのではないかと思いましてな」
 エウメネスは微笑を浮かべた。
 スキピオから託されたドミティウスと知っての来訪に違いなかった。




「同じこと?」
「戦車ですよ」
「あ…」
「わたくしも悩んでおりましてな」
 エウメネスにも一翼の指揮を担ってもらうことになっていた。それ即ち、戦車隊の一撃を蒙る可能性があるということ。
「我が兵も、随分大王の軍とは矛を交えて来ており、鍛えられている筈なのですが…。あの鎌付き戦車には怯えを見せておりましてな」
 王は苦笑した。
 ペルガモン人も戦車隊との遭遇はこれが初めて。ずらりと並んだ戦車のまがまがしい鎌の刃の光に、畏怖を覚えるのは人間本能としてやむを得ないであろう。




「ですが、一つ弱点を見出しました」
「ほう、何ですかな」
 ドミティウスは身を乗り出した。
「戦車は馬二頭立てとなっています」
「…確かに。それがまた悩ましい所」
 構造上、一頭に傷を負わせても、もう一頭が無事ならば戦車は止まらない。
 といって、乗員全てを仕留めても鎌付き戦車が突っ込んで来ることには変わりはない。それだけでも、緒戦にローマ・ペルガモン連合軍の隊列を乱すという大王の意図は達せられることになる。




「いや、そうではありませぬ」
 エウメネスは言った。
「え」
「一頭を傷つけさえすれば、恐らくもう一頭は恐慌に陥りましょう」
 エウメネスは、そこは動物、象などと同じように動転するに違いないと言った。
 即ち、機械仕掛けではなく動物であるからには恐怖や怯えが働くということだ。




「なるほど…確かに」
 ドミティウス、戦車隊を退け難しと思い込み、よく見ていなかったことに気付いた。
「即ち、我らは乗員ではなく馬一頭を狙えば良い、ということか…」
「左様」
 二人は、それからも夜更けまであれこれと談合した。
 その最後は、大いに笑みを漏らすようになっていた。

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