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二人の指揮官の逡巡(続き)
他方、ローマ軍本陣。
こちらでも、総司令官ルキウス・スキピオが逡巡していた。
「…そうか。今日も敵に動きはなかったか」
安堵する日々を送っていた。
報告を上げる密偵の司令であるミルトは首を傾げた。
(あれほど大王軍との対決を念願しておられたのに、これはどういうことであろう)
ルキウスの心情には明らかに変化が訪れていた。
(兄が到着してから戦端を開くのが良策だ)
彼は、これまでヒスパニア、アフリカで活躍して来た。が、それはいずれも兄スキピオ・アフリカヌスの采配の下であった。自身が総指揮を振るうのはこれが初めて。
しかも、敵が味方の三倍弱の大兵力であること、加えて、初見の戦車隊の大部隊。慎重を通り越し半ば萎縮していたのだ。
(兄をそばに置き、万全を期すべきである)
と、そこに。軍団長ドミティウスとペルガモン王エウメネス二世が連れ立って現れた。
「コンスル閣下」
「お、どうなされた二人打ち揃って」
「敵の急所を見出しましたぞ」
「敵の急所?」
二人は無敵に見える戦車隊の弱点を代わる代わる説明した。
「ふうむ…なるほど。それならば何とかなるやも知れんな…」
ルキウス、ようやく愁眉を開いた。
「大丈夫です」
ドミティウスは語気を強めた。
「我がローマの投槍兵、ペルガモンとアカイアの弓兵で一斉に攻撃をかければ」
それは、ローマ軍伝統の戦法とは異なる、飛び道具主体の先制攻撃の進言であった。
「左様」
エウメネスも同調した。
「戦車隊の足を止めれば、敵の中央を恐れる必要がなくなります」
戦車隊の後方に大王軍の主力ファランクスの大部隊が控える。戦車隊を潰乱させれば、それらの戦力が役立たずになる、と王は説いた。
二人の意見に、なおも熟慮を重ねていた総司令官ルキウスであったが、
「よし…」
短く気合いの声を発した。彼の内でも勝算を見出したものに違いない。
「渡河するぞ」
それは一大決心だった。敵の機先を制しヘルモス川を渡るというのだ。
寡勢である兵を率い、なおかつ川を背にする。普通ならばあり得ない。
だが、ドミティウスとエウメネスの二人も、これに異論無く賛同した。
「今こそ戦機にございます」
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