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挑発(続き)
「よし」
大王もようやく決心した。
「出陣だ。陣立ては、かねがね申し渡した通り。よろしいか、諸侯よ」
「おおう!」
大王軍は出陣した。
城壁の前にあった部隊は、ローマ側の見立て通り、そのまま前進した。
左右両翼に騎兵隊のアゲーマ、中央に重装歩兵隊のファランクス、歩兵隊の両脇を象軍が進み、さらにその両脇にアラビアのラクダ騎兵隊が進み、全軍の前方を戦車隊の大部隊ががらがらと進んでいく。その他にもカッパドキア投石兵やらリュディア弓兵などの兵が無数に従う。
その進軍の様は壮観であった。それは、まさしく世界帝国の威容であった。
大王の軍勢は、ローマ軍におよそ10スタディオン(約1.8km)に迫る地点に到達すると、進むのを止めた。
ここから北を眺めると、ローマ軍の布陣が手に取るように分かる。ローマ軍は、まさにヘルモス川を渡ったすぐの場所に布陣している。
(本当に戦う気なのか…)
大王は訝しんだ。
「陛下、いかがいたしましょう」
ゼウクシスが訊ねたのは、直ちに合戦突入する気配がローマ軍に見えなかったからだ。
「うむ。ここにて、しばし様子を窺おう」
「はっ」
大王軍は、総出になって長大な柵を連ね始めた。
その様子を、大王は見詰めていた。
(さあ、スキピオよ。準備は万端整ったぞ。早くやって来い)
ところが、である。
翌日から、ローマ騎兵やペルガモン騎兵が、大王軍の陣前に押し掛け始めた。
「大王よ!出て来い」
「臆したか!戦え!」
しきりに挑発を始めたのだ。
「陛下!このような侮り、放置しておくのでございますか!」
セレウコス王子はじめ諸将は怒った。
今、こんな大胆不敵な振る舞いを大王の権威に向かって仕掛け得るのは、世界広しといえども、このローマの勢力以外にはあるまい。
アンティオコス大王は表情を微塵も変えない。
「挑発に乗るな。そのようなものに乗せられ戦えば、歴史家の物笑いぞ」
齢五十を越えている彼。こんなものに動じる年齢ではない。
というより、大王は不思議でならなかった。
(戦力劣勢にあるルキウスが、何ゆえ挑発を仕掛けてまで戦いを急ぐのか)
スキピオが未だエライアに留まったままであるのは調べが付いている。
(何かある…それを掴むまでは動けぬぞ)
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